米上院が9月15日に採決を迎える暗号資産市場構造法「クラリティ法案(CLARITY Act)」の3大争点と可決/否決シナリオを整理。BCGやWeb3スタートアップへの影響、規制明確化がもたらすビジネスチャンスを解説する。
米国の暗号資産規制を大きく塗り替える可能性を持つ「CLARITY Act(Digital Asset Market Clarity Act)」が、いよいよ9月15日に上院のクローチャー投票(審議打ち切り動議)を迎える。可決には60票が必要とされる中、報道ベースでは共和党側で53票程度が固まっており、あと7票の民主党票を獲得できるかが最大の焦点になっている。投票4日前となる現時点で、3つの争点と、可決・否決それぞれのシナリオがブロックチェーンゲーム(BCG)やWeb3スタートアップに与える影響を整理していきたい。
CLARITY Act(正式名称:Digital Asset Market Clarity Act of 2025)は、米国で長らく曖昧だった暗号資産の規制権限を明確化することを目的とした法案だ。下院を通過したのち、上院での審議が続いていた。
法案の核となるのは、デジタル資産を「digital commodity(デジタル・コモディティ)」と「securities(証券)」に分類し、前者を商品先物取引委員会(CFTC)、後者を証券取引委員会(SEC)の管轄下に置くという整理だ。分散化が十分に進んだブロックチェーンネットワークのトークンについてはコモディティとして扱う道筋がつくとされている。
現状、米国では「Howey Test」に基づくSECの解釈に頼るしかなく、多くのWeb3プロジェクトが規制の不透明さから米国市場を避けてきた経緯がある。法案が成立すれば、その霧が晴れることになる。
上院でのクローチャー投票(フィリバスター=議事妨害を打ち切る動議)を通過するには60票が必要だ。現在の議席構成では、共和党側の賛成票が53票前後で固まっているとみられている一方、民主党側から7票以上の賛成を引き出せるかが勝負どころとなる。
Coinbase CEOのBrian Armstrong氏は「法案は可決される」との見方を示しているが、民主党内では消費者保護やAML(マネーロンダリング防止)条項の強化を求める声が根強い。投票直前まで修正案をめぐる調整が続く可能性が高い。
最大の論点は「分散化(decentralization)」の定義だ。法案では、ネットワークが十分に分散化されたトークンをdigital commodityとして扱う道筋を示しているが、その判定基準をどこまで厳格にするかで意見が割れている。基準が緩ければWeb3スタートアップにとって追い風となる一方、投資家保護の観点から慎重な議論も続いている。
DeFiプロトコルの開発者や、セルフカストディウォレットの提供者に対して、金融仲介業者としての規制を課すべきかどうかも大きな争点となっている。現在の草案では、コードを書くだけの開発者には規制を及ぼさない方向で整理されているものの、民主党側からは追加の規制を求める修正案が提出される可能性がある。
すでに発行済みのトークンや、稼働中のプロジェクトを新法の枠組みにどう当てはめるかも重要なポイントだ。移行期間の長さ、既存の登録要件との整合性、過去の発行行為の遡及的な取り扱いなど、実務面での調整が必要となる論点が積み上がっている。
法案が可決された場合、米国拠点のBCGスタジオやWeb3スタートアップにとっては、規制コストの見通しが立ちやすくなる大きな転換点となる。トークン発行やNFT販売において、SECの証券該当性リスクに怯えることなく、CFTC管轄のコモディティとして事業設計ができる余地が広がる。
米国のVCマネーがWeb3セクターに再流入する可能性も高く、海外拠点に流出していたプロジェクトのUターン、あるいは新規プロジェクトの米国設立が加速するシナリオが想定される。特にBCG領域では、Play to Earnやアイテムトークン化のビジネスモデルを米国ユーザー向けに堂々と展開できるようになる意義が大きい。
一方、クローチャーが不成立となり法案が塩漬けになれば、Web3プロジェクトの米国離れがさらに進むだろう。すでに欧州のMiCA規制、UAEやシンガポールの前向きな規制環境、日本の暗号資産税制改正の動きなど、米国以外の選択肢は年々整いつつある。
BCGスタジオにとっては、米国ユーザーへのトークン配布やNFT販売に慎重にならざるを得ない状況が継続する。「米国居住者除外」の運用コストが積み上がり、グローバル展開の足かせとなる状態がしばらく続くことになる。
9月15日の投票結果は、単なる米国内の規制議論にとどまらず、世界のWeb3勢力図を再編する分水嶺となる可能性がある。可決されれば米国が再び業界の中心に返り咲き、否決されればアジア・欧州の存在感がさらに増す。BCGやWeb3スタートアップの担当者は、どちらのシナリオでも自社プロダクトの展開戦略に直結する話として、投票結果と修正案の内容を注視しておきたいところだ。
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