米上院で審議中のCLARITY Actが7月22日に新テキスト公開。DOJ単独執行条項をめぐり民主党議員2名が離反、8月休会前の採決が最終決戦となる見通しだ。
米上院銀行委員会と農業委員会が共同で審議を進めている暗号資産市場構造法案「CLARITY Act(クラリティ法案)」について、7月22日に新たな法案テキストが公開された。法案はほぼ最終形に到達しているが、執行機関の権限をめぐる1つの条項で民主党議員2名が離反し、8月7日の議会休会前が事実上のラストチャンスとなっている。
CLARITY Act(Digital Asset Market Clarity Act)は、米国における暗号資産の規制枠組みを明確化するための包括的な市場構造法案だ。長年にわたり議論されてきた「どの暗号資産が証券(SEC管轄)で、どれが商品(CFTC管轄)か」という管轄権のグレーゾーンに、法的な決着をつけることを目指している。
法案が成立すれば、Bitcoin、Ethereum、XRPをはじめとする主要な暗号資産について、SECとCFTCの役割分担が制度上はっきりする。取引所や発行体にとっては、どのルールに従えばよいかが見通せるようになり、米国内での事業運営コストが大きく下がる可能性がある。
CoinDeskによれば、7月22日に公開された新テキストは下院を通過したバージョンをベースに、上院側で修正を加えたものだ。倫理規則の一部を時限措置とするなどの変更が加えられており、法案は「最終ドラフトへの出発点(a start on the final draft)」の段階に入ったとされる。
法案の大枠についてはすでに超党派の合意が形成されつつあるが、最後まで折り合いがつかないのが執行機関に関する条項だ。
現在のテキストでは、暗号資産関連の刑事執行権限を司法省(DOJ:Department of Justice)に一元化する内容が盛り込まれている。しかしこの「DOJ単独執行条項」に対して、民主党の一部議員が強い懸念を示している。247wallst.comの報道によれば、これまで法案に前向きだった民主党議員のうち少なくとも2名が、執行権限の集中に対する慎重論から離反する動きを見せているとされる。
離反する議員側の主張は、CFTCやSECといった既存の規制当局の執行権限を温存すべきというものだ。DOJに権限を集中させると、専門性のある市場監督が弱まり、投資家保護に穴が空きかねないという理屈である。
一方、法案推進派は執行機関を一本化することで、業界側の予見可能性を高め、二重規制のリスクを避けるべきだと主張する。1文字レベルの文言修正が、10年先の米国暗号資産市場のあり方を左右する構図となっている。
CNBCの報道によれば、上院版のCLARITY Actには、連邦政府職員が在任中に暗号資産を発行することを禁止する条項が新たに追加されている。対象は大統領、副大統領、議員、閣僚級の高官などを含む幅広い範囲だ。
背景には、政治家や政府関係者が自らに関連するミームコインや暗号資産プロジェクトを発行することへの倫理的懸念がある。近年、著名政治家の名前を冠したトークンが投機的な値動きを見せるケースが目立っており、利益相反や市場操作のリスクが指摘されてきた。
倫理規則については時限措置とする案が示されており、恒久的な禁止ではなく一定期間後に見直す設計となっている。政治的な合意を得やすくするための妥協案としての側面が強い。
条項が最終的にどのような形で残るかによって、米国における「政治×暗号資産」の関係性が大きく変わる可能性がある。
米上院の議事日程を踏まえると、8月7日から始まる夏季休会前の採決が事実上の勝負どころとなる。休会明けは中間選挙モードが色濃くなり、大型法案の審議は難航しやすくなるためだ。
現時点で調整が続いているのは、離反した民主党議員を法案支持側に引き戻すための執行条項の文言修正である。DOJ単独執行を維持しつつCFTCやSECの関与を条件付きで残す折衷案が浮上しているとされ、7月末から8月頭にかけて最終テキストが確定する見通しだ。
法案が休会前に上院を通過すれば、下院との調整を経て年内成立の可能性が現実味を帯びる。逆に休会前の採決を逃せば、成立時期は大幅に後ずれし、米国の暗号資産産業は再び規制の不透明感の中に置かれることになる。
業界関係者、投資家、そして暗号資産プロジェクトの開発者にとって、これから2週間の議会動向は文字通り10年に一度の分岐点となる。
CLARITY Actは、米国暗号資産業界にとって長年待ち望まれた市場構造法案だ。ただし、法案の完成度が高まるほど、残った争点の重みは増していく。DOJ単独執行という1条項が、10年先の産業構造を左右する分水嶺となっているのは象徴的だ。8月休会前の2週間、米国上院で何が決まるかは、日本のブロックチェーンゲームプレイヤーやトークン投資家にとっても他人事ではない。米国基準は世界基準に波及するからだ。最終文言を最後まで見届けたい。