米上院のスーン院内総務がCLARITY Act(暗号資産市場構造法案)の8月休会前通過は困難と正式に表明。Polymarketの成立確率は37%まで低下し、中間選挙とトランプ関連の倫理問題が立法プロセスを直撃している。日本のGameFi開発者が直面する米国規制空白リスクを解説する。
米上院のジョン・スーン(John Thune)院内総務が現地時間7月23日、暗号資産の市場構造を規定する「CLARITY Act(Digital Asset Market Clarity Act)」について、8月の夏季休会前に上院で可決される見込みはないと正式に表明した。予測市場Polymarketにおける9月末までの成立確率は一時60%を超えていたものの、報道時点で37%前後まで急落している。中間選挙の政治日程と、トランプ大統領一族の暗号資産事業をめぐる倫理問題が立法プロセスを直撃した格好だ。
米議会で暗号資産業界が最も注目してきた法案「CLARITY Act」が、当初の想定スケジュールから大きく後退する見通しとなった。
上院共和党のジョン・スーン院内総務は7月23日、記者団に対し、CLARITY Actを8月の夏季休会入り前に本会議で採決するのは現実的ではないと述べた。上院は8月初旬から約1ヶ月間の休会に入るのが慣例で、実質的な審議再開は9月以降になる。
CLARITY Actは、暗号資産をSEC(米証券取引委員会)とCFTC(米商品先物取引委員会)のどちらが管轄するかを明確化し、トークン発行者や取引所に対する法的な枠組みを整備する市場構造法案だ。下院ではすでに超党派で可決されており、上院での審議入りが業界最大の焦点となっていた。
Polymarketに上場している「CLARITY Actが9月末までに成立するか」という予測市場では、7月中旬に60%を超えていた成立確率が、Thune発言を受けて37%前後まで下落している。
CLARITY Act遅延の背景には、複数の政治要因が絡んでいる。
第一に、2026年11月に控える中間選挙だ。上院議員は選挙区の争点対応に時間を割かれるようになり、複雑な金融規制法案に党派を超えた合意を形成する政治的余力が急速に失われている。特に民主党側では、規制緩和的な内容を含む法案に賛成することで選挙戦のリスクを負う議員が増えているとみられる。
第二に、トランプ大統領一族が関わる暗号資産事業をめぐる倫理問題が浮上している。Fortune誌の報道によれば、トランプ・ファミリーが関与するミームコインやDeFiプロジェクトが立法審議の場で繰り返し取り上げられ、民主党議員が「大統領の私的利益に資する法案」として反対姿勢を強めているとのことだ。
第三に、上院独自の修正要求だ。上院銀行委員会のティム・スコット委員長らは、下院版CLARITY Actをそのまま採決するのではなく、上院独自の枠組みを盛り込んだ修正版を用意する意向を示している。両院協議会を経る必要が生じれば、成立はさらに後ろ倒しになる。
議会関係者の発言を総合すると、上院の現実的な目標は「9月中の委員会採決、年内の本会議可決」となる。
ただし、9月に審議が再開されても、10月には次年度予算をめぐる継続決議の攻防が控えており、政府機関の閉鎖リスクを含む予算審議が最優先課題となる。CLARITY Actのような業界特化型の法案が、審議日程を確保できる保証はない。
Cryptotimesの報道によれば、業界団体は「2026年内成立」を防衛ラインと位置づけつつも、内部では「2027年前半へのずれ込みも織り込み始めた」との声が出ているという。
米国での規制枠組み確立が遅れれば、ステーブルコイン発行体、DeFiプロトコル、そしてブロックチェーンゲームのトークン発行者が「どの規制当局に登録すべきか」わからないまま事業を継続することになる。
CLARITY Actの遅延は、日本のブロックチェーンゲーム開発者にとっても他人事ではない。
多くの国内GameFiプロジェクトは、ユーザーベース・流動性・投資家アクセスの観点から米国市場を無視できない状況にある。しかし米国では、SECが「大半のトークンは未登録証券」とする姿勢を維持しており、CLARITY Actが成立するまでこの解釈リスクが残り続ける。
具体的には、①米国居住者へのトークン販売やエアドロップの実施、②米国上場取引所への上場交渉、③米国VCからの資金調達といった各局面で、法的な不確実性が高止まりする。
一部の日本プロジェクトは、米国居住者を完全にブロックする「ジオフェンシング」を強化する動きを見せているが、これはユーザー獲得の機会損失を意味する。逆に米国市場に踏み込めば、SECからのエンフォースメント(法執行)リスクを背負うことになる。
CLARITY Actが成立しない限り、この二者択一の構図は続く。日本の開発者は、少なくとも2026年内は「米国規制空白」を前提としたトークン設計・地域戦略を組む必要がある。
CLARITY Actの8月休会前通過が事実上絶望的となったことで、米国の暗号資産規制空白は少なくとも数ヶ月延長される。中間選挙とトランプ倫理問題という「政治のノイズ」が、業界の悲願である市場構造法案を押し戻している構図が鮮明になった。日本のGameFi開発者にとっては、米国市場戦略を「規制成立を前提としない」形で再設計する必要性が高まっている。9月の議会再開時に、Thune院内総務がどこまで本気で審議入りを主導するのか——次の6週間が正念場だ。