イーサリアムを調べていくと、キャスパー(Casper)というワードを良く目にします。
イーサリアムのキャスパーは、PoWからPoSへと移行するにあたり重要なステップとされています。
この項ではキャスパーについて解説します。
キャスパー(Casper)とは、現在のイーサリアムのコンセスアルゴリズムであるPoW(プルーフオブワーク)からPoS(プルーフオブステーク)へ移行させるためのプロジェクトのこと指します。
大阪で開催されたイベントDevcon5にてヴィタリック氏は、「イーサリアムブロックチェーンがPoSシステムへ移行することで、イーサリアムのエコシステムの安全性やスケーリングが向上する」と伝えました。
イーサリアムは、ビットコインと同様の承認アルゴリズムPoWを採用しています。イーサリアムのアルゴリズムはASIC対策されており、このアルゴリズムのことをEthashと言います。
*ただし、BIT MAINがイーサリアムに対応するASICを開発。これによりASICを用いた独占が懸念されている
イーサリアムは「ワールドコンピューティング」をコンセプトに掲げていますが、現行のPoWでは、イーサリアムが望む高速処理を実現できません。
このため、イーサリアムのロードマップでは、最終的にPoWは廃止しPoSに移行することが予定されています。
ビットコインや他の通貨(イーサリアムも含め)でも多く採用するProof of Workは、膨大な電力を使うため、コスト(電力/電気代)が高く生じます。
また、PoWは計算能力の高いコンピュータを使う人に有利となるため、権力が集中してしまうリスクもあります。
このような懸念のもと、イーサリアムコミュニティでは問題解決に向けキャスパー(Casper)を提案しています。
プールオブステーク(PoS:Proof of Stake)は、簡単にいうとコインの持ち分が多ければ多いほど、ブロックを作成できる確立が上昇するアルゴリズムです。
PoWでは計算能力(仕事量)を重視しますが、PoSではコインの保有量が重要になります。
PoSは「PoW」が持つ問題点を解決するために開発されました。消費電力はPoWと比較して圧倒的に少なく、51%攻撃が難しいとされます。
現在、イーサリアムが採用するPoW(Ethash)では、スマートコントラクトを用い理想的な処理はできません。そのためPoSへの移行が計画されています。
PoSはコインを多く保有しているノードによってブロック生成されるので、PoWのようなエネルギー効率の悪いマイニングを行いません。これによって高速処理を実現します。
また、PoSでは51%攻撃が起こりづらいと言われています。
PoSで51%攻撃をするためには、大量のコインを保持しなければいけません。それには膨大なコストがかかり、また、51%攻撃を行えばその通貨価値を下げることになるので、インセンティブを失われてしまうからです。
PoWではマイニングを行うマイナーが取引の検証を行ないますが、PoSではバリデーターと呼ばれる参加者が取引の検証を行います。
バリデーターは自身のコインをステークして(担保にして)検証に参加し、ステークに応じた比率の報酬を受け取ることができます。
PoSにもいくつかの問題を抱えています。キャスパーではそれらの問題を解決するため、Slasherなどのシステムを導入しています。
Slasherは「ペナルティ」的な要素を取り入れたもので、バリデータが悪意のある行動をして「問題がないと報告」すると、バリデータの掛金が没収されるというものです。
キャスパーにはFFG CasperとCBC Casperの2つのプロジェクトがあります。
FFG Casperは、PoWとPoSを組み合わせたハイブリットなコンセンサスアルゴリズムで、Vitalik Buterin氏がリードして研究しています。
PoWマイニングを行う「マイナー」と、PoSで検証を行う「バリデータ」の双方にマイニング報酬が支払われるようになるため、PoWにおけるブロック報酬は1ブロックあたり3ETHから0.6ETHへと減少します。
Casper CBCは、イーサリアム財団の研究者であるVlad Zamfir氏によって考案されたもので、PoSの安全性を高めて100%PoS採用する為のプロトコルです。
イーサリアムは最終的にPoSへと移行しますが、急な変更には大きなリスクが生じるため、段階を追って移行する予定です。
現行のPoW➤ハイブリット型➤完全なるPoSアルゴリズム
キャスパー導入により、「スケーラビリティ問題の解決」、「51%攻撃」、「消費電力のコスト削減」の改善が期待されています。
メインネットでの本格稼働は年内であるということなので、今後、実装されればイーサリアムの価値は高まっていくのではないでしょうか。