先日(26日)、スイスのチューリッヒに拠点置くプライベートバンク、ジュリアスベアがスイスの仮想通貨バンキングSEBAと提携することを発表しました。
ジュリアスベア銀行は「正当で持続可能な資産クラスになることを確信」と述べており、顧客は資産の保管、トレード、投資ができるようになるそうです。
スイスと言えば世界の富裕層が利用する”プライベートバンク”として有名で、金融業が発達した経済先進国です。
当然、金融と深く関わっているので、仮想通貨に着目しない訳がありません。
では、スイスは仮想通貨をどう捉えているのでしょうか?
この記事では、仮想通貨とスイスの関係について見て行きたい思います。
まず、仮想通貨の前にどうして富裕層がスイス(銀行)に資産を預け、金融立国としてできたのか興味が沸きます。
スイスは”プライベートバンク”の発祥とも言われ、多くの富裕層がその資産を預けています。
この背景には、「軍事力の強さ・永世中立国(不可侵)・地形的な要素・永世中立国」などが挙げられます。
日本が鎌倉時代の頃、スイスでは傭兵をビジネスとしていました。傭兵は報酬として得たお金又は、奪った金品なども収入としていたため、祖国であるスイスでは、情報秘匿性、信頼度が高いプライベートバンク的な銀行が多くできます。
また、地形的にも岩山に囲まれているため、戦乱から逃避させるには理想の地でした。
1815年にはウィーン会議で永世中立国となるので、よりその要素は高まります。
諸国間のトラブルに巻き込まれにくくなる訳ですからね。
このような経緯から、世界の資産(大事な資産)がスイスに集まるようになり、金融業が発達していきます。
プライベートバンクは富裕層から資産を預かり、その資産を運用していく金融機関です。
取り分けスイスのプライベートバンクは、その資産を守ることを目的としています。
仮に資産数億円あったとして日本の銀行に預けたとします。
経済事情により円安が進むとこの資産は目配りしてしまいます。
また、税金も多く取られてしまいますよね。
スイスのプライベートバンクは守秘義務が厳格なため、顧客情報を漏らしません。
なので、税金の安い国に資産を移したり、脱税の手段として利用された経緯もあります。
プライベートバンクで世界最古(創業1741年)と言われたスイスのヴェゲリン銀行が脱税を認め閉鎖した事例もあります。
スイスへの巨額資金集中、脱税行為(マネーロンダリング・テロ資金等含め))に対し米国、EU諸国などから批判される対象となり、不正口座の閉鎖や守秘義務の一部解除など求める動きが出てきます。
このような背景も含め、スイスでは早い段階から仮想通貨に注目します。
時価総額ランキング2位に位置するイーサリアム。
スマートコントラクトを実装するプラットフォーム型の仮想通貨ですが、このイーサリアムの普及や活動を促進する目的として創立されたのがイーサリアム財団です。
この財団の本部がスイスの”ツーク州”にあります。
このツークは”クリプトバレー”とも呼ばれ、多くのブロックチェーン関連企業がこの地を拠点とし活動しています。
2018年末時点には、企業数が過去1年で約2倍(600社)に増加。
企業の評価額が440憶ドル(約4.9兆円)に達したそうです。
スイスでは仮想通貨ビジネスのための環境が整備されており、法人税の税率も低く、州全体で企業の営業活動を支援する政策を取っています。
また、世界で初めてブロックチェーン技術を使った身分証明書を発行したり、2016年には公共料金などを仮想通貨の決済導入するなど、早い段階から仮想通貨を実需として取り入れています。
更にICOに対しても有効的な姿勢でもあることから、イーサリアム財団を始め、多くの企業がツークに集まるようになりました。
クリプトバレーアソシエーション(クリプトバレー協会)は、2017年に設立された政府支援を受けた非営利組織です。
スイスで会社を設立する企業などに対しフィンテック技術の促進、サイバーセキュリティのシステム開発など、あらゆる面を推進することを目的とし、国内の大学とも協力して教育活動にも力を入れています。
クリプト協会では、このような取り組みを総括して”エコシステム”と呼んでいます。
今回報道された”ジュリアスベアの提携”からも、今後スイスのプライベートバンクから新たな動きが見られると思います。
スイス銀行は脱税やマネーロンダリングの資金確保など国際的にも議論されていますが、このような伝統のあるプライベートバンクが、今後どのように仮想通貨を取り扱うか又、どのような発言をするか注目が集まります。