Ethereumの次期大型アップグレード「Glamsterdam(グラムステルダム)」が最終開発フェーズに突入。ePBS導入によりL2ゲームチェーンのガスコスト削減とスループット向上が期待される。ブロックチェーンゲームへの影響を解説する。
Ethereum Foundationは、次期大型アップグレード「Glamsterdam(グラムステルダム)」が最終開発フェーズに入ったことを明らかにした。開発者向けテストネット(devnet)は2026年内の稼働を目標としており、パブリックテストネット公開に向けた準備が本格化している。目玉となるのは「ePBS(Enshrined Proposer-Builder Separation)」の導入で、L2ゲームチェーンのガスコスト削減とトランザクション処理速度の向上に直結する変更として、ブロックチェーンゲーム業界からも注目を集めている。
Glamsterdamは、Ethereumが2025年に実施した「Pectra」、そして2025年後半に完了した「Fusaka」に続く、次のハードフォークにあたる。ロードマップ上ではデータ可用性の拡張とバリデーター体験の改善を主眼に据えたアップグレードと位置づけられている。
開発は最終フェーズに移行しており、コアデベロッパーによるコード実装と検証作業が進行中だ。Ethereum Foundationによれば、devnetの立ち上げが目標として掲げられており、その後にパブリックテストネットへと段階的に展開していく計画だとしている。
名称の「Glamsterdam」は、Ethereumコミュニティが集うDevconnect開催地アムステルダムに由来する。過去のアップグレード命名慣例を踏襲した形だ。
Ethereumのアップグレードは、L1本体だけでなくL2エコシステム全体に波及する。特にブロックチェーンゲームで多用されるArbitrum、Optimism、Base、Immutable zkEVMといったL2チェーンにとって、L1側の変更はガス代構造や処理性能に直接影響する重要イベントとなる。
Glamsterdamで導入が予定されている最重要機能がePBSだ。従来、Ethereumではブロック提案者(プロポーザー)とブロック構築者(ビルダー)の役割分離は、MEV-Boostのような外部リレーソフトウェアに依存していた。ePBSはこの分離をプロトコルレベルで組み込む仕組みだ。
具体的には、バリデーター(プロポーザー)は自身でトランザクションを並べるのではなく、専門のビルダーが構築したブロックを選択して提案する。役割の明確化により、MEV(Maximal Extractable Value)の抽出プロセスが透明化され、中央集権的なリレーへの依存が解消される。
ゲーム開発者やプレイヤーにとってメリットは大きい。ブロック構築が最適化されることで、L2からL1へのバッチ送信コストが下がり、結果としてL2上でのトランザクション手数料の低下につながる。また、フロントランニングなどのMEV攻撃に対する耐性も向上するため、NFTのミント時やマーケットプレイス取引での不利益が減ることが期待される。
ブロックチェーンゲームの多くは、コスト面からL2チェーン上で稼働している。Immutable zkEVM上の「Might & Magic Fates」や「Gods Unchained」、Ronin上の「Axie Infinity」、Polygon上の「SNPIT」など、主要タイトルはL2/サイドチェーンを主戦場としている。
Glamsterdamでは、ePBSに加えてブロブ(blob)容量のさらなる拡張も検討されている。ブロブはL2がL1にデータを書き込む際に使う専用領域で、容量が増えるほどL2の実効スループットが向上する。Fusakaで一定の拡張が行われた後、Glamsterdamでの追加拡張が実現すれば、L2側のガス代は段階的にさらに下がっていく見込みだ。
ゲームプレイの観点では、NFTミント、アイテム売買、キャラクター育成といった頻繁なトランザクションが必要な場面でコスト負担が軽減される。無課金ユーザーや小額課金ユーザーにとってもプレイ障壁が下がり、ゲーム内経済の活性化が期待される。
Glamsterdamでは、ePBS以外にもバリデーター運用体験の改善が議論されている。焦点となっているのが「スロット時間」の見直しだ。現在Ethereumは12秒ごとに1ブロックを生成しているが、この時間を短縮する提案も俎上に載せられている。
スロット時間の短縮が実現すれば、L1のファイナリティ速度が向上し、L2側の確定時間も連動して短くなる。ゲーム内アイテムの取引や、NFTマーケットプレイスでの決済確認がよりスピーディーになる可能性がある。
一方で、スロット時間の短縮はバリデーターのハードウェア要件や地理的分散性に影響を与えるため、コアデベロッパー間でも慎重な議論が続いている状況だ。最終的にどの提案がGlamsterdamに含まれるかは、devnet段階での検証結果を踏まえて決定される。
Ethereum Foundationのロードマップでは、Glamsterdamの開発フェーズを経て、devnet稼働、パブリックテストネット展開、そしてメインネット適用という段階を踏む。過去のアップグレード事例を踏まえると、devnet開始からメインネット適用までは半年から1年程度を要する。
ゲーム開発者にとっては、テストネット段階での動作検証が重要になる。スマートコントラクトのガス消費量やイベント処理の挙動が変わる可能性があるため、Immutable、Polygon、Arbitrumなど主要L2の対応スケジュールを追跡しながら、自社タイトルの動作テストを進める必要がある。
プレイヤー側から見ても、Glamsterdam適用後はL2上でのプレイ体験が実感できるレベルで改善されると予想される。NFTのマーケット取引時の手数料や、ゲーム内トークンの送金コストなど、日常的な操作に関わる部分での効果が期待される。
Glamsterdamは、L1バリデーター体験の改善という表向きのテーマ以上に、L2エコシステム全体、とりわけブロックチェーンゲーム領域に静かで大きな変化をもたらすアップグレードになりそうだ。ePBSによるMEV耐性の向上とブロブ拡張によるガス代低下は、無課金プレイヤーの流入障壁を下げ、L2ゲームチェーンの競争環境をさらに加速させるだろう。開発者はテストネット段階からの検証準備を、プレイヤーはお気に入りタイトルの対応情報を追う価値がある。
Ethereum公式ロードマップ(Glamsterdam):https://ethereum.org/roadmap/glamsterdam/
Ethereum Foundation:https://ethereum.foundation/
Ethereum公式サイト:https://ethereum.org/