今年(2019年)10月から11月にFATFの第4次相互審査が予定されています。
今回の審査では初めて仮想通貨も対象になることから、仮想通貨交換業者における対応も金融庁を中心に進められています。
この記事では、FATFのこれまでの取り組みについて解説します。
FATFとは「The Financial Action Task Force(金融活動作業部会)」の略で1989年フランスのパリで開催されたアルシュ・サミット宣言により設立されました。
設立当初は麻薬犯罪におけるマネーロンダリング(資金洗浄)対策を目的としていましたが、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件以降、テロ組織への資金供与対策についても監視を行っています。
2019年4月現在、OCED加盟国を中心に36ヵ国・地域及び2つの国際機関が加盟しており、各国の外交当局や金融監督当局、警察当局などの関係者が資金供与対策に取り組んでいます。
日本からは財務省、警察庁、金融庁、法務省、外務省の関係者が出席して意見交換を行っています。
米国・カナダ・アルゼンチン・ブラジル・メキシコ
フランス・ドイツ・ギリシャ・デンマーク、フィンランド
アイスランド・オランダ・ルクセンブルク・ノルウェー・ポルトガル・スペイン・スウェーデン・スイス・英国・アイルランド
オーストリア・イタリア・ベルギー・トルコ
日本・中国・韓国・香港
オーストラリア・ニュージーランド
インド・シンガポール・マレーシア・イスラエル
ロシア・南アフリカ
欧州委員会(EC)、湾岸協力理事会(GCC)
日本は設立当初からのメンバーで1998年7月から1999年6月まで議長国として務めていました。
麻薬犯罪におけるマネーロンダリング(資金洗浄)、テロ組織への資金供与対策に関する国際基準「FATF勧告」の策定及び見直しを行っています。FATF勧告は加盟国だけではなく世界190以上の国や地域(非加盟国)にも適用。
1990年FATFは、マネーロンダリング対策に向け「資金洗浄に関する40の勧告」を提言しました。
資金洗浄を犯罪として取り締まり、匿名、偽名による顧客管理の禁止、資金洗浄・テロ資金供与における疑いのある取引の届け出を義務化するなど国際的な協調を求めました。
2001年9月、米国同時多発テロ事件を受け、同月テロ資金対策のために「テロ資金供与に関する8の特別勧告」を策定。また、2004年では国境を超える資金の物理的移転を防止するための処置として項目が追加され「9の特別勧告」となりました。
2012年FATFは、テロ資金供与とマネーロンダリングは密接な関係にあることから、「40の勧告」と「9の勧告」を統合した新たな勧告「新勧告」を公表しました。
2014年1月、ビットコイン財団の副会長チャーリー・シレムがマネーロンダリング容疑により逮捕。当時インターネット上の闇サイト「シルクロード」で違法薬物を売買する犯罪者らに、およそ100万ドル(約1億200万円)相当のビットコインを販売したことによるものです。
また、国内でもマウントゴックス事件が起きるなど、FATFにおいても仮想通貨の適切な規制を含め、透明性拡大を確保する動きが現れます。
2015年6月、Guidance for a Risk-based Approach to Virtual Currencies という FATF 勧告が仮想通貨にどのように適用されるかを示すガイドラインを発表。各国に対して注意喚起を促しました。
このような国際的な動向を踏まえ、日本でも仮想通貨の規制に関する議論が広まり、その内容をワーキング・グループ報告(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20151222-2.html
)として公表。
2018年10月FATFは勧告15「新技術の悪用防止」を改正し、仮想通貨交換業者、仮想通貨管理業者、ICO関連サービス業者に対して、マネ―ロンダリング・テロ資金供与規制を課しました。
日本は2008年、FATFによる第3次相互審査を受けましたが、審査報告書では10項目について不履行、15項目にについて一部履行という厳しい評価を受けました。
これに伴い、犯収法の改正法が執行されますが、2014年6月のFATFの総会において「日本に対してマネー・ローンダリング対策およびテロ資金供与対策に関する十分な立法をすることを要請する」という厳しい声明が出されます。
FATFは2019年2月、勧告15の解釈指針の草案を発表。本草案は2019年6月に正式採用される予定です。
2019年10月~11月に予定されているFATFの第4次対日相互審査では、仮想通貨も初めて対象になります。
前回では49の監査項目中25項目が要改善という厳しい評価を受けているので、金融庁を中心に対応が進められています。