Animoca BrandsのYat Siu「AIエージェントがWeb3ゲームの大衆採用を実現する」——ウォレット操作を自動化

Animoca BrandsのYat Siu「AIエージェントがWeb3ゲームの大衆採用を実現する」——ウォレット操作を自動化

Animoca BrandsのYat Siu氏が、AIエージェントの可能性と「Animoca Minds」の開発背景、Web3普及のリアルなシナリオ、そしてブロックチェーンゲームの行方について率直に語ったインタビューを深掘りする。

Animoca Brands(本社:香港)のエグゼクティブチェアマンを務めるYat Siu氏が、自社開発のAIエージェントプラットフォーム「Animoca Minds」への取り組みを語った。AIがWeb3のマスアダプションを後押しする可能性から、ブロックチェーンゲーム市場の現在地まで——その言葉には、業界の最前線に立ち続けてきた人間ならではの確信と温度がある。

AIエージェントを日常に溶け込ませるAnimoca Minds

Animoca BrandsのエグゼクティブチェアマンであるYat Siu氏は、自らがAnimoca Mindsの最初のユーザーでもあると言う。複数のAIエージェントをすでに日常業務や生活の中に取り込んでおり、その使い方は実に多岐にわたる。

家族旅行のスケジュール管理に始まり、投資家との関係管理、連絡先の整理まで——3人の子どもを持つ父親として、学校のスケジュールや宿題のリマインドにもエージェントを走らせている。仕事では、投資家リストの管理やミーティングの記録、フォローアップのタイミングまでAIに任せている。既存のデータベースと組み合わせながら、細かな情報整理を人間の手から少しずつ解放している。

さらに、このプラットフォームが面白いのは、ユーザーが必要に応じてAIに新しいスキルを「覚えさせる」ことができる点だ。Yat Siu氏はある日、東京発のフライト遅延を確認したいと思い、AIにいくつかの航空情報サイトを参照させて情報を取得するスキルを構築させた。APIを指示するだけで、AIが情報取得のロジックを組み立て、到着時に家族へ通知を送る仕組みまであっという間に完成したという。コードを一行も書かずに、だ。

「賢い検索エンジン」から「動くエージェント」へ

Yat Siu氏は、現在のAI利用の実態について少々手厳しい見方をしている。大半のユーザーはいまだにAIを「より賢い検索エンジン」として使っているに過ぎないというのだ。

質問を入力して答えをもらう——その構造は、検索窓にキーワードを打ち込んでいた頃と本質的に変わっていない。回答の質は格段に上がっているが、人間の行動パターンはほとんど変化していないと彼は見る。

エージェント型AIはその先にある。ユーザーに代わって情報を取りに行き、グループの中で役割を持ち、議論にも加わる。Animoca MindsがメールやTelegramといった日常のメッセージング環境を主戦場に選んでいるのも、そのためだ。人々がすでに使い慣れたチャット画面の中にエージェントを自然に溶け込ませることで、AIを「使うもの」から「一緒にいるもの」へと変えようとしている。

「AIが一人の人間と会話するだけじゃなく、グループの中で情報を共有し、議論に参加する形が重要だ」とYat Siu氏は言う。仕事における複数人の協働作業を陰で支え、必要な情報を適切なタイミングで届ける——そんな役割を担うAIの姿を、彼はすでに具体的に描いている。

ゲームの司会進行も、開発の補助も

Animoca Mindsの用途はビジネスにとどまらない。Yat Siu氏が紹介した「Game Master」と呼ばれるエージェントは、テキストベースのゲームを自動生成する仕組みだ。国当てクイズや、参加者の旅行履歴をテーマにしたゲームなど、グループチャットに参加者の情報を投げ込めば、AIがゲームマスターとして場を仕切ってくれる。

また、API連携を通じた簡易的な開発作業への活用も進んでいる。開発ツールと直接つながっていない状況でも、APIを組み合わせることでさまざまな機能を作り出せる。

Yat Siu氏が強調するのは、こうした機能が技術者だけのものではないという点だ。コードを書いたことがない高齢者でも、言葉で指示するだけで新しい機能を追加できる未来——彼はそこをゴールの一つに据えている。

EthoswarmとCryptoSlamが生んだ化学反応

Animoca Mindsの開発を担っているのは、Animoca Brandsのポートフォリオ企業であるEthoswarmだ。そのチームの中核を成すのが、NFTデータ分析サービスCryptoSlamのメンバーたちである。

CryptoSlamはNFT市場のデータインデックスとして成長を続けてきた会社で、AIエージェントを活用したNFT取引の経験を積み重ねてきた。その実績と知見が、Animoca Mindsという新しい形に結実した。

開発に火がついたのは、OpenClawと呼ばれる新しいAI技術の登場がきっかけだった。すでに進行中だったプロジェクトが急速に加速し、一気にサービスとして世に出ることになった。

「チェーンを意識させない」がゴール

暗号資産が一般に普及しない最大の壁の一つは、その複雑さだ。Yat Siu氏はAIエージェントがその壁を取り払う可能性を持っていると確信している。

ゲームをプレイするためにNFTが必要になったとしよう。今なら、どのマーケットプレイスで買うか、どのチェーンで発行されているかを自分で調べなければならない。だがAIエージェントがウォレット管理からブリッジ操作まで全部引き受けてくれるなら、ユーザーはゲームに集中するだけでいい。技術の話は、エージェントに丸投げできる。

AIはウェブの「情報流通」を書き換える

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Yat Siu氏の視野はさらに広い。AIエージェントはインターネット全体の情報流通構造を根本から変える可能性があると彼は言う。

すでに検索エンジンの要約機能によって、ユーザーがウェブサイトを直接訪れる機会は減り始めている。この流れが進めば、将来的にはAIエージェントがユーザーの代わりに情報を取りに行き、必要な内容だけを届ける仕組みが当たり前になるだろう。ニュースサイトもメディアも、AIエージェント経由でコンテンツが届けられる時代が来るかもしれない。

そのとき、報酬やインセンティブの流通にはトークンエコノミーが活用されると彼は予測する。AIエージェントがユーザーの代理として動くことで、情報流通の主導権が再びユーザーの手に戻ってくる——そんな構造の転換を、Yat Siu氏は楽観的に、しかし真剣に見据えている。

数千人のユーザーと、14ドルのARPU

現時点でAnimoca Mindsのユーザー数は数千人規模、エージェント数も同様に数千単位に達している。登録したものの使い方がわからず利用が止まってしまうケースもあるが、アクティブユーザーの平均収益(ARPU)は約14ドルと、スタート地点としては悪くない水準だ。

Yat Siu氏はAIアシスタントの価値が広く理解されれば、月額30〜40ドル程度の支払いは珍しくなくなると見ている。日々の情報更新や管理作業を継続的にこなしてくれるサービスには、それだけの価値がある——そう言い切れるだけの手応えを、彼自身が使い込んで感じているのだろう。

ブロックチェーンゲームへの、揺るがない確信

ブロックチェーンゲーム市場については、Yat Siu氏の姿勢は変わっていない。強気だ。

金融企業と比べてゲーム企業の評価額が低いことを根拠に、ブロックチェーンゲームを過小評価する声があることは彼も認識している。しかしゲーム産業の歴史を振り返れば、数千万ドル規模の企業でも十分に「成功」と呼べる。Animoca Brandsが初期から関わったThe SandboxもAxie Infinityも、最初の評価額はほんの数百万ドル規模だった。

すべてのプロジェクトが数十億ドルを目指す必要はない。数億ドル規模の評価を得られれば、それは立派な成功だ——彼はそう割り切っている。

GameFiを「逆から見る」

GameFiの捉え方についても、Yat Siu氏は一味違う角度を持ち込む。ゲームに金融を組み込むだけでなく、金融そのものをゲームにするという発想だ。

予測市場Polymarketはその典型例だと彼は言う。ソーシャルトレーディングやランキング機能など、ゲーム的な要素を取り入れた金融サービスが若い世代に支持されているのは、その証拠だろう。ゲーム業界が長年かけて磨いてきたゲーミフィケーションの手法は、金融の世界でも十分に通用する。

AnichessとCHECKトークンが示す「等身大の成功」

Animoca Brandsが関わるチェスゲーム「Anichess」とCHECKトークンの話も、この流れの中にある。現在の完全希薄化評価額は約6000万ドル規模。数十億ドルには届かないが、Chess.comや世界チャンピオンMagnus Carlsen氏が関わるチェスゲームとして考えれば、これは十分な規模だとYat Siu氏は言う。

彼が繰り返し強調するのは「持続可能な成長」の重要性だ。初期評価額が1000万〜2000万ドル程度でも、長期的に安定して伸びていく方がはるかに価値がある。急騰と急落を繰り返すトークンモデルはコミュニティの信頼を少しずつ削っていく。派手さよりも、息の長いプロジェクトを——それがYat Siu氏の変わらない哲学だ。

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