当初10月9日にテストネットが予定されていたイーサリアムのハードフォーク「コンスタンティノープル」が延期すると、Bitcoin Exchange Guideが先月(10月)報じました。
今回のハードフォーク延期の理由として、コンスタンティノープルのアップデートの中に脆弱性が発見された事が主な理由として挙げられています。
イーサリアムはアップデートを行うのに、①フロンティア、②ホームステッド、③メトロポリス(ビザンチウム、コンスタンティノープル)、④セレニティの4つのフェーズが示されており、コンスタンティノープルはメトロポリスに含まれる2番目に当たります。
この記事ではイーサリアムの4つのハードフォーク(アップデート)の概要について解説します。
イーサリアムは初期の構想段階から、フロンティア、ホームステッド、メトロポリス、セレニティという4回のアップデートを行い開発されていくことが決まっています。
現在、フロンティア、ホームステッド、メトロポリス前半のビザンチウムが無事終了しており、今後コンスタンティノーブル、そして最終形態となるセレニティを迎えることになるます。
イーサリアムはこれらのアップデートを行うことで、スケーラビリティ問題への解決や利便性を向上さて行きます。
フロンティアはイーサリアムで最初に行われたアップデートで、2015年7月30日にリリースされました。
ここでの変更は、テスト環境のみで動かしていたイーサリアムを技術者向けに開放することで、実践的に使えるものとして実験的(テスト版)に取引を行える段階にしました。
Gethと呼ばれるコマンドラインで操作することが可能になり、開発者は実際にコードを書いて動かすことが可能。何かしらのバグやエラーが起きた際は、いつでも巻き戻せるような状態になっていました。
実際にはフロンティアで大きなバグは発生せず、安定稼働し続けたので次のアップデート(ホームステッド)に移行しました。
ホームステッドは、2016年3月に実施されたアップデートで、フロンティアで修正した上で一般の人が使えるレベルにまでアップデートされました。
取引手数料の引き上げやブロックチェーンの分岐を防ぐための採掘難易度(difficulty)の調整などを運用するためのルールの修正などが行われています。
主な変更内容
・新しいオペコードの追加
・GASコスト調整。GASコストを21000から53000にUP。
・署名検証の厳格化
・GASが足りない場合処理されないように
・難易度調整アルゴリズムの変更
最初のアップデートであるフロンティアと比べ大きくアップデートされており、使い勝手が非常によくなりました。
これに伴い世界中の企業やプロジェクトが、イーサリアム上でアプリケーションを開発することができるようになりましたが、アップデートの3ヶ月後には「THE DAO事件」が起き、これをきっかけに2017年7月、イーサリアム初となるハードフォークが行われました。
ここで誕生した仮想通貨がイーサリアムクラシックです。
メトロポリスは、2017年10月に実施された現在実行中のアップデートで、かなり大きなアップデートのため、ビザンティウム(Byzantium)とコンスタンティノープル(Constantinople)の2段階に分かれています。
メトロポリスは元々2016年後半に完了する予定でしたが、現在第一段階のビザンティウムしか完了していません。
ビザンティウムは2017年10月に実行され、匿名性、セキュリティの強化が行われました。
匿名性の強化
匿名性の強化についてはzk-SNARKによる取引匿名性を導入しました。
zk-SNARKは「ゼロ知識証明」と呼ばれる量子耐性のある理論を取り入れた匿名性の高い技術で、ジーキャッシュにも使われている技術です。
マスキングの導入
マスキングと呼ばれるセキュリティを高める技術も導入されました。
ユーザーが任意の秘密鍵を決めることが可能となり、ハッキングへの対策がさらに強化されています。
この技術により、以前から指摘されていた量子コンピュータによる「公開鍵から秘密鍵を割り出す」と言うことができなくなります。
またビザンティウムでは、イーサリアムのアルゴリズムであるPoW(プルーフオブワーク)からPoS(プルーフオブステーク)への以降準備が行われました。
スマートコントラクトを簡単に実装できる仕組み
イーサリアムのスマートコントラクトを利用する上で、プログラムの難易度が高いことが挙げられます。
この問題にいたりビザンティウムでは、プラットフォームを直観的に操作できるようにするためにデザインの変更などが行われている他、ウォレットの安定したバージョンのリリースなども行われました。
スマートコントラクトが一般ユーザーにも使いやすいよう簡略化され、これによりイーサリアムの普及が見込まれています。
コンスタンティノープルはメトロポリスに含まれる後半のアップデートで、5つのアップデートが行われる予定です。
このうち重要とされるのが
・ブロックのハッシュ方法の変更
・イーサリアム仮想マシン(EVM)の処理能力向上
・マイニング報酬の減少(マイニング報酬が3ETH→2E)
以前ではマイニング報酬に関して、開発者側とマイナー側で意見が纏まらず、開発者が支持するEIP1234と、マイナーが支持するEIP1295の間で争いがありました。
開発者側が支持するEIP1234では、報酬を3ETHから2ETHにしようという案です。
この狙いは、報酬を減少させることでイーサリアムの供給量を減らしインフレを抑制、イーサリアムの価値を維持することが目的です。
また、イーサリアムの価値が下がればネットワークを攻撃コストが下がるので、開発者側はセキュリティ強化のためにも、供給量を減らすことを推奨していました。
一方、マイナー側が支持するEIP1295は、マイニング報酬とマイニング難易度を据え置く案で、EIP1295を支持する理由は収益が落ちてしまうからです。
9月1日に行われたコミュニティの投票でマイニング報酬を3ETH→2ETHへ変更する「EIP1234」が過半数以上の賛成で可決したので、特に問題がなければイーサリアムはマイニング報酬が減少することになります。
アップデートの時期は前述でも述べた通り、脆弱性が発見された事で延期されました。
今後、更に延期することも考えられるでしょう。
セレニティは最後に予定されているアップデートで、イーサリアムが多くの人に安全に利用されるよう完成を目指しています。
よりセキュリティの確保された分散型アプリケーション構築のためのプラットホームが形成される予定です。
セレニティの時期は未定ですが、PoW(プルーフオブワーク)からPoS(プルーフオブステーク)へと以降され、スケーラビリティ問題も解決される予定です。
キャスパー(Casper)
イーサリアムは現在PoWを採用していますが、今後セレニティにてキャスパー(Casper)と呼ばれる独自のPoSへと以降することが予定されています。
PoWは競争によりエネルギー効率が悪いため、膨大な電力を消費します。
また、PoWでは1秒間に15~20回のトランザクションしか承認することができず、これも問題視されていました。
イーサリアムはこの問題を解決すべくPoSへと移行しようとしているのです。
PoSへ移行することで膨大な電力を消費することがなくなり、ブロックの生成時間も短縮することができるため、スケーラビリティ問題の解決にも繋がります。
キャスパーには開発者の違いから、キャスパーFFGとキャスパーCBCの二種類あります。
キャスパーFFGはPoWとPoSハイブリッド型で、キャスパーCBCは完全PoS型です。
どのように適用されていくかは分かりませんが、2018年1月1日、ヴィタリック氏が主導するキャスパーFFGがテストネットリリースされました。
イーサリアムはキャスパーに移行する予定ですが、多くのマイナーはこれに反対しています。
キャスパーに移行することで、マイナーの扱うマイニングマシンがこれまでと同じようには使えなくなるからです。
承認方式が変わればマイニング用のマシンも変更しなければならず、当然マイナーはマシンを購入するのに膨大な費用がかかるからです。
イーサリアムは元々ハードフォークされることを前提として誕生した仮想通貨です。
現状まだ完成された状態ではないので、今後広く活用されていく上でイーサリアムのアップデートは必要不可欠でしょう。
時期が延期することもあると思いますが、良い状態で世の中に出ていくために、必要なことだと思うので焦らず待ちたいと思います。