サンフランシスコで開催された「SF Blockchain Week 2019」のメインイベントEpicenterより、ブロックチェーンゲームとNon-Fungible Tokenに関するセッション「Why NFTs are Not Truly Yours」のレポートをお届けします。スピーカーはChromniaのリードデベロッパーを務めるRiccardo Sibani氏です。
前回のレポートで紹介したForteのように、ブロックチェーンゲームに関するセッションでは、開発環境の整備に取り組むプロジェクトがいくつか見受けられました。
本セッションを担当したChromaWayも、DApps開発に特化したブロックチェーン「Chromia」やSQLでブロックチェーンを利用することができるPostChainなどを開発しています。
2016年には、スウェーデンの土地登記所と連携することで、ブロックチェーンで土地の登記情報を管理するシステムを開発し話題となりました。
ChromaWayは、世界で初めてBitcoin2.0を実装したといわれているAlex Mizrahi氏がCTOを務めていることでも有名です。
本セッションでは、そんなChromaWayのリードデベロッパーを務めるSibani氏より、ゲームと親和性の高い「Non-Fungible Token」について語られました。
Sibani氏によるプレゼンテーションは、ソーシャルゲーム開発における現状の課題提起から始まりました。
彼は、「開発者は高いコストを費やし、プレイヤーはゲーム資産を半永久的には保有できず、パブリッシャーはゲームアイテムからの利益を最大化できていない」と説明します。
そして、ブロックチェーンを活用することで「公平かつセキュアなゲームを作ることができ、アイテムに流動性を持たせることまで可能だ」と述べました。
しかし、ブロックチェーンゲームには「開発者への負担が大きすぎる」という課題があるといいます。
Sibani氏いわく、開発者への負担となっている最たるものが「Non-Fungible Token(NFT)」の実装です。
ブロックチェーンゲームを開発する上で、NFTの実装は欠かせません。
ゲーム内の資産をNFTで表現することで、これまでのソーシャルゲームには無かった体験を実現することができます。
セッションの後半におけるメインパートは、現状のNFTにおける「Pluggability(接続性、追加組み込みの容易さ)」についてです。
Sibani氏は、「現在のブロックチェーンゲームにおけるNFTは、発行者による影響を強く受けます。なぜなら、ゲームのロジックだけでなくプレイヤーのアカウントなど、ほとんどがオフチェーンに記録されているからです。」と述べました。
さらに、ゲームのコントローラに例えて次のように指摘しています。
「まず、オンチェーンに記録されていないゲームロジックはいつでも巻き戻すことが可能です。パワークリープ(ゲーム内におけるインフレ現象。追加キャラクターやアイテムの価値がゲーム内で大きな影響を持つこと)をいつでも引き起こすこともできます。プレイ時はNFT発行者の影響を強く受けるだけでなく、NFTの発行はいつでも停止することができるのです。」
Sibani氏は、「NFTを真にDecentralizedな状態で活用するためには、まず開発環境を整備する必要があります。Chromiaはゲームだけでなく、今後のDApps開発を担う存在だといえるでしょう」と語り、セッションを締め括りました。
Sibani氏のいうように、現状のNFTは”事実上”のNon-Fungibleである点が否めません。
しかし、ブロックチェーンのスケーラビリティやオラクル問題が障壁となっているのもまた事実です。
ブロックチェーンの実用化が進む上で、NFTはさらなる普及が期待されるため、引き続き動向に注目していきたいと思います。