スクウェア・エニックスがTezosのバリデータ(ベイカー)として名乗りを上げた。ノード運用に踏み切った背景と、ブロックチェーンゲーム分野への波紋、そしてTezosエコシステムが描く成長の絵姿に迫る。
スクウェア・エニックス(本社:東京都新宿区、以下、スクウェア・エニックス)が、ブロックチェーン「Tezos」でバリデータ(ベイカー)としてノード運用を始めたと発表した。ゲーム会社が自らインフラ層に手を入れるというこの動きは、Web3ゲームの世界に新たな風を吹き込むかもしれない。
スクウェア・エニックスが、Tezosブロックチェーン上で「ベイカーノード」の運用を始めた。ベイカーとは取引の検証やブロック生成を担う役割で、ネットワークそのものを支える屋台骨だ。
これまでのスクウェア・エニックスは、あくまで投資家という立ち位置だった。だが今回の一手で、ブロックチェーンを「使う側」から「動かす側」へと踏み込んだことになる。ノードを自ら運用することで技術への理解を肌で深めながら、ネットワークの維持にも直接貢献していくという狙いだ。
同社の上原秀明氏はこれまでの複数のブロックチェーン関連プロジェクトへの投資実績にも触れ、今度はノード運用を通じてさらに深く技術と向き合っていく姿勢を明らかにしている。
スクウェア・エニックスはこれまで、「The Sandbox」や「HyperPlay」といったプロジェクトへの出資を足がかりに、Web3の世界と関わってきた。
ただ今回のTezos参画は、そこからもう一段踏み込んだ話だ。お金を出すだけでなく、ブロックチェーンの基盤を自分たちの手で支える立場に移ったのだから。バリデータになるということは、トークンのステーキングやネットワークのセキュリティにも責任を負うことを意味する。
ゲーム会社がインフラ層まで踏み込む例はまだ少ない。だからこそ、業界の目がこの動きに集まっている。
Tezosはプルーフ・オブ・ステークを採用した、省エネルギーが売りのブロックチェーンだ。自らアップグレードできる設計と、充実したスマートコントラクト機能を持ち、ゲームとの相性の良さが以前から語られてきた。
そのゲームエコシステムは2025年時点で約44万人のユニークユーザーと3100万件のトランザクションを積み上げており、着実に育ってきているのがわかる。
モバイルゲームから大規模マルチプレイヤーゲームまで、幅広いタイトルが集まり始めており、ゲームに強いチェーンとしての地位を着々と固めているところだ。
Tezosの開発組織Trilitechは、スクウェア・エニックスの参加を「ゲーム業界における信頼性を一段引き上げるものだ」と歓迎している。
名の知れた大手パブリッシャーがバリデータとして加わることは、ネットワークの信用を底上げするだけにとどまらない。開発者や他の企業が「ここに乗っかってみようか」と踏み出すきっかけにもなるはずだ。
Tezosはこれまでもゲーム企業やスポーツ団体と組んできた実績を持つ。そうした積み重ねの上に、Web3ゲームの使い道をさらに広げようとしている。
今回の動きは、ゲーム企業がNFTやトークンを「使う」だけの段階を超え、ブロックチェーンの根っこの部分に関わり始めたことを示している。
かつてのWeb3ゲームといえば、ゲーム内アイテムの所有権とかマーケットプレイスの話がほとんどだった。だがバリデータとして参加するとなれば、ネットワークそのものの価値をつくり出す側に回ることになる。話のスケールがまるで違う。
スクウェア・エニックスほどの大手がインフラ運営に加わることで、ゲームとブロックチェーンの結びつきはこれまでより一段深いものになっていくだろう。
これからのゲーム企業は、「面白いものを作って届ける」だけでなく、「ネットワークを一緒に育てる」という役割も担うようになっていくとみられる。
バリデータ運用で積んだ知見は、自社タイトルへのブロックチェーン統合や、まったく新しいゲーム設計の発想につながっていく可能性もある。
インフラとコンテンツの両方を自分たちのものにする戦略は、Web3時代を勝ち抜く上でひとつの強みになる。
スクウェア・エニックスのTezosバリデータ参画は、ゲーム企業の関わり方がアプリケーション層からインフラ層へと広がりつつある流れを示す、象徴的な一歩だ。
NFTを使うだけでは差がつかない時代が近づいており、ネットワーク運営やトークン経済の設計まで見据えた総合的な戦略が問われるようになるだろう。
大手の動きが他社に伝染していくかどうか、そこが次の見どころだ。