ブロックチェーン技術に関して多くの業界が注目しています。
世界でも有数の自動車メーカートヨタも例外ではありません。
現在、自動車メーカーでは自動運転、コネクテッドカーへの研究開発に力を入れています。
この開発には人工知能が大きな鍵を握っていますが、近年、ブロックチェーン技術を活用しようと言う動きも見られます。
トヨタも同様で、子会社であるトヨタ・リサーチ・インスティテュート(Toyota Research Institute, Inc.:TRI)が、昨年5月にイーサリアムアライアンス(EEA)に参画したのは記憶に新しいです。
ここでは、トヨタがブロックチェーンをどのように活用していくのか見ていきたいと思います。
トヨタの自動運転車両の実現に向けて欠かせない存在となるのが、トヨタ・リサーチ・インスティテュート(Toyota Research Institute, Inc.:TRI)です。
TRIは2016年1月にトヨタ自動車によって設立された研究所で、人工知能技術に関する先端研究、商品企画を目的として設立されました。
TRIはMIT(マサチューセッツ工科大学)のメディア・ラボと協力してブロックチェーン技術を開発。
2017年5月にはイーサリアム企業連合(Enterprise Ethereum Alliance:EEA)に参加を表明したことで、ETHの価格も暴騰しました。
また、2018年3月に関連会社としてTRIの日本拠点としてトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント株式会社(Toyota Research Institute Advanced Development:TRI-AD)が設立しています。
TRI-ADも同様、自動運転技術における共同技術開発を行っています。
まだ設立して間もないことから、今後どのような話題を提供してくれるか楽しみです。
さて、TRIではブロックチェーン技術を導入することを明らかにしており、主に自動運転車両の開発、カーシェアリング、自動保険の分野で利用されると想定されています。
そしてトヨタは研究所に対して、2016年~2020年の5年間にかけて約10憶ドル(日本円で約1,120億円)を投入するそうです。
自動運転車両は人工知能の技術開発を進めると共に、周りの状況を車体が装備するセンサーを用いて認識するだけでなく、さまざまな通信機能を駆使して、周辺の車両や信号機などの道路設備、あるいはクラウドと通信することで周辺情報や地図情報、道路情報をリアルタイムで入手することを前提に設計されています。
また、安全性かつ信頼性の高い自動運転車両を実現するためには、何千億キロの運転データが必要で、個人オーナ、企業の運行管理者、自動車メーカーとの間で情報共有を必要とします。
ブロックチェーンは記録情報全体を多くのコンピューターに分散管理させるデータベース技術で、改ざんされにくいシステムを構築できるため、この特徴を生かした自動車ユーザー向けのソリューション開発が始まっています。
TRIの最高財務責任者はブロックチェーン技術を活用することで「自動運転車の安全性、効率性、利便性が広く利用されるようになるという目標への到着を早めることが期待される」と述べています。
カーシェアリングとは、会員との間で特定の自動車を共同で使用するサービスまたは、システムのことを言います。
レンタカーは不特定多数が利用しますが、カーシェアリングはあらかじめ利用者として登録した会員に対してのみ自動車を貸し出します。
24時間貸出、返却が可能で無人で借りることができることから、レンタカーよりも便利で安価になるように設定されています。
車を借りる側の走行履歴(事故履歴など)や、鍵の遠隔ロックや開錠、エンジン始動/停止などに必要な電子データを、ブロックチェーンを活用して安全に管理します。
また、カーシェアリングでは、イーサリアムのスマートコントラクトも活用すると考えられます。
スマートコントラクトとは、契約を自動で実行させることができるシステムで、この技術を活用すれば、「車の代金を事前に支払えば、車の所有権と車の鍵が自動で開錠される」という契約を、既存の販売業者やレンタカー屋を介さずに自動で実行させることができるのです。
もしこれが実現すれば、仲介業者に支払っていたコストを抑えることができます。
トヨタは、ブロックチェーンを活用することで、適切な走行距離に基づいた保険料の設定の実現を目指しています。
車両に搭載したセンサーが、走行データを収集し、改ざんが極めて困難なブロックチェーン上に記録。
利用者はブロックチェーン上にある運転データにアクセスすることで保険会社の透明性を高め、保険会社のデータの改ざん防止を図ることで、保険料の削減が期待できるというものです。
また、スマートコントラクトを活用することで、データ管理に必要だったコストの削減や、一部のプロセスを自動化することで人件費の削減もでき、その分、保険会社が徴収する保険料も抑えることができると考えられます。
ドイツのBMW社は、ブロックチェーン技術開発を手がけるcarVerical社と提携し、自動車に関連するさまざまな情報をブロックチェーン上で処理できるプラットフォーム構築を目指しています。
また、VeChain Thorとのパートナーシップを締結したことも発表されています。
フォルクスワーゲン(VW)傘下の自動車メーカーポルシェは、ブロックチェーン技術を車の管理や制御に活用する目的で、同社が製造・販売するパナメーラ(Porsche Panamera)へブロックチェーン対応アプリを搭載して試験を行っているそうです。
この試験には、ブロックチェーンとAI開発を行うベルリンのスタートアップ企業Xainが協力しています。
フォルクスワーゲンとIOTAが自動車のデータ管理アプリケーション、デジタル・カーパス(Digital CarPass)のプロジェクトを共同で進めています。
デジタル・カーパスは、車両に関連する様々なデータの管理や送受信を行うことができるIOTAの実用的なアプリケーションで、機密性の高い状態で車体のコンディションや走行データなどの様々なデータを迅速かつ効率的な方法で管理することができるようになります。
今年5月、BMW、フォード、GM、ルノー4社と他の多数の企業によってブロックチェーン技術を適用することを目的とした共同体、Mobility Open Blockchain Initiative(モビリティ・オープン・ブロックチェーン・イニシアチブ:MOBI)を立ち上げました。
この団体にはBosch、Blockchain at Berkeley、Hyperledger、Fetch.ai、IBM、IOTA(、ZF Friedrichshafenなど、30以上のメンバーによって構成されています。
そして、この共同体は先ほど紹介したTRIの前CFO及び、モビリティサービス・ディレクターを務めたクリス・バリンジャー氏によって指揮が取られています。
MOBIの公式サイトトップページには「ブロックチェーンと関連技術を使用し、より安全かつ安価にモビリティを提供する」と掲げられています。
また、ミッションの項目には「業界、消費者、およびコミュニティの利益のために、ブロックチェーン標準化を推進し、および関連技術の応用を加速する」とあります。
自動車大手メーカーと、これだけのブロックチェーン企業が関わる共同体ということで、自動車業界がブロックチェーン技術を活用することは間違いなく、今後どのような展開を見せるか大変気になるところです。
トヨタは今年1月に、自動運転技術を活用したモビリティサービス専用次世代EV(電気自動車)イーパレット(e-Palette Concept)を公開しました。
Amazon、Didi Chuxing、Pizza Hut、Mazda、Uberなどと提携しており、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでこの車両の運行を予定しています。
イーパレットは、車両制御インターフェースを開示し、他社が提供した自動運転制御キットを搭載することが可能。
このプラットフォーム上でサービス業者が必要とするAPI(Application Programming Interface)を公開するそうで、このシステムを構築するのにブロックチェーン技術が使われると予想されます。