IVS 2026 CRYPTO ZONEで自民党Web3ホワイトペーパー策定メンバーの弁護士2名が登壇。ステーブルコイン実装、金融のオンチェーン化、AIエージェント、暗号資産の金商法入りと2028年の分離課税導入まで、日本のWeb3規制・税制の最前線を整理する。
「Web3のためのWeb3は終わった」——2026年7月1日、京都市で開催されたIVS 2026 CRYPTO ZONEのセッションで、自民党Web3ホワイトペーパーのドラフトに携わってきた2名の弁護士が、派手さの去ったあとに残った日本クリプトの現在地を語った。銀行系ステーブルコインの実装、金融のオンチェーン化という不可逆な流れ、そして暗号資産の金商法入りと分離課税導入——開発者・投資家が今押さえるべき制度潮流の変化点を、京都カンファレンスの議論から読み解く。
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出典 : www.4gamer.net |
2026年7月1日、京都市で開催されたIVS 2026のクリプトステージにおいて、セッション「web3・クリプト競争環境の現在地〜web3ホワイトペーパー・ドラフトメンバーによる対談」が行われた。
登壇したのは、アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー弁護士の河合健氏と、森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士の増田雅史氏。いずれも自民党のWeb3ホワイトペーパー策定に携わってきた法制度の最前線に立つ2名だ。モデレーターはAI企業AVILEN CEOの松倉怜氏が務めた。
NFTが投機的な熱狂を集めた時代は過去のものとなりつつある。だが、熱が引いたぶん、社会実装は静かに、そして着実に進んでいる。銀行が発行するステーブルコインの登場から、金融のオンチェーン化、非金融領域での浸透、AIエージェントとの親和性、そして目前に迫る金商法入りと分離課税まで、多岐にわたる論点が議論された。
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出典 : www.4gamer.net |
最初のテーマとなったのが、銀行系ステーブルコインの実装だ。河合氏によれば、SBI VCトレードで、SBI新生信託銀行が発行する円建てステーブルコイン「JPYSC」が登場したという。
円建てステーブルコインとしては第2号案件にあたる。先行するJPYCが1つあたり100万円の発行上限を抱えるのに対し、銀行系の信託型として発行されるJPYSCにはその制限がかからない。設計としてはブラックリスト方式を採用し、AML/CFT上で問題のある相手には渡らないようにしつつ、パブリックチェーン上で流通させる形だ。
税法上の手当てがまだ必要なため、現時点ではVCトレードの口座内に限られているが、いずれパブリックチェーンでの流通に移行する見込みだ。3メガバンクでも同様の動きが進んでおり、ほかにも複数のプロジェクトが動いているという。
流れはステーブルコインだけにとどまらない。MMFをトークン化する構想や、現在は日銀の振替制度で運用されている国債をトークン化する議論も視野に入ってきている。河合氏は、金融そのものをブロックチェーン上で走らせることが、今後の大きなトレンドの1つになっていくとの見方を示した。
増田氏は、Web3がWeb2を丸ごと塗り替えるという見方に距離を置く。GoogleのIDひとつで何でも使えるWeb2はあまりに便利で、そう簡単には覆らない。両者は住み分ける形で広がっていくだろうという。
ただし例外がある。既存インフラが相当に時代遅れな領域では、一気に置き換わる可能性がある。その筆頭が金融だ。国際送金でSwiftを介して複数の金融機関を経由し、手数料を取られ続ける仕組みはかなり時代遅れで、それを丸ごとスキップする試みが実用化されつつある。
河合氏もこれに同意する。生活者向けアプリはすでに十分便利で、あえてブロックチェーンでなくてもいい。だが金融は「確実に決済されなければならない」世界だ。ブロックチェーンは履歴がすべて残り、二重支払いもなりすましも起きにくい「硬い」性質を持つ。金融のオンチェーン化は不可逆な流れになる、と河合氏は語った。
本丸が金融だとして、スタートアップはどこで戦うのか。河合氏が挙げたのはインフラレイヤーだ。ウォレットならFireblocksやBitGo、AML/CFTならChainalysisやEllipticといった海外勢が強い領域だが、まだ余地は大きい。
日本人の資産を大量に預かるのに、最後にどうなるか分からない海外製のウォレットに頼っていていいのか、という問いも残る。AIのように技術差が決定的についた領域ではないぶん、オラクルのような外部データ連携も含め、勝負できる余地は多いというのが河合氏の見立てだ。
増田氏は非金融の領域にも目を向けた。象徴的なのがNFTだ。かつてのブーム期と比べてNFTという言葉を耳にすることは減ったが、言葉が下火になったからといって中身まで縮んだわけではない。BtoBをはじめ、さまざまな局面での利活用はむしろ着実に拡大している。
イーサリアムやEVM互換のチェーンを使えば、対応するウォレットはすでに存在し、比較的低予算・少人数で発行機能を組み込める。既存の金融機関までもが、自社のバンキングアプリをウォレット化してNFTを持てる機能を組み込む、といった相談を寄せるようになってきたそうだ。
DAOについては、当時喧伝されたような形で広がっているとは言えないという。ただ、地方創生や特定のサッカーチーム、コンテンツを支援する「推し活」的な活動で、トークンを使ってファンの熱量をエンゲージメントにつなげる仕組みは相当に増えている。呼称にこだわらない多様なバリエーションが広がってきているというのが増田氏の見立てだ。
もう1つのトレンドが、来歴証明が重要になる分野だ。カーボンオフセットの排出権取引では、「どういう来歴で生まれた権利なのか」がきわめて重要になる。プロジェクトが約束どおりに実行されなければ後から権利が取り消される構造になっているためだ。
もう1つは、グローバルな潮流である「ビジネスと人権」だ。サプライチェーンをたどり、奴隷労働や児童労働が行われていないかを確認する必要が急速に高まった。「このものはどこから来たのか」の可視化が大前提になる領域で、履歴が改ざんされずに残るブロックチェーンの性質が効いてくる。
今回のIVSでも大きなテーマとなったのが、AIエージェントとWeb3インフラの関係だ。増田氏は技術的な親和性の高さは間違いないと応じつつ、いま自分の財布をAIエージェントに委ねようという人はそう多くないと述べる。
むしろ増田氏が本命と見るのは、人ではないものとやり取りする場面だ。AI学習のためのクローリングによってWebサイトへのアクセスが急増し、CDNへの支払いが増大している問題に対し、クローラーからマイクロペイメントで薄く徴収できれば解決しうる。手数料がほぼゼロというWeb3インフラの特性は、機械と機械の自律的なやり取りにこそ向いているという。
河合氏は、金融では相手が分からず契約も成り立たない状態では安定した金融取引は難しいと指摘する。エージェントのアドレスと背後の主体を特定していく世界が要るが、その方向性が示されない限り、本格実装は難しいというのが河合氏の見方だ。
目先の制度改正の話にも及んだ。暗号資産の金商法入りと、分離課税の導入である。河合氏によれば、改正案は今年4月に出て衆院を通過したものの、参院での議論がなかなか始まらない状況にあるという。
仮に2027年7月ごろに成立すれば、そこから1年後の段階施行となる見込みだ。分離課税の適用は2028年1月からが予定されているが、これは金商法改正の成立が前提になる。
世間では分離課税というアメと金商法で規制が厳しくなるムチとして語られているが、河合氏は、厳しくなるのはサービスを提供する側のルールで、分離課税の恩恵を受けるのは利用する側だから、両者は別の方向に働いていると率直に述べる。
要は、暗号資産は有価証券とは別物としつつも、規制のうえではかなり有価証券に寄せる方向性になる。公募で発行すればディスクロージャーが必要になり、インサイダー取引規制も入ってくる。交換業者は金融商品取引業者へと名を変え、資本増強を含めた重いルールを課される。
ブロックチェーンゲームの開発者・投資家にとっても、ゲームトークンがこの制度潮流の外に立てるのかは大きな論点だ。ETFの解禁を見据えた証券会社からの暗号資産交換業取得の相談も現に来ているといい、プレイヤーの顔ぶれが変わっていくのは避けられない。
最後に増田氏は、現実空間と情報空間がシームレスに統合されるSociety 5.0を見据え、有体物や紙を前提とした民事法体系そのものの見直しが必要だと語り、セッションを締めくくった。
IVS 2026 CRYPTO ZONEで語られたのは、「Web3のためのWeb3」の終焉と、金融インフラとしての本格実装の始まりだ。ゲームトークンも例外ではなく、金商法入りによって発行体・取引所ともに有価証券に近い規律を課される時代が近づいている。分離課税というアメの陰で進む規制強化の全貌を、開発者と投資家は今のうちに読み解いておきたい。派手さは去ったが、勝負はここからだ。
出典(4Gamer記事):https://www.4gamer.net/games/991/G999104/20260702010/
IVS 2026公式サイト:https://www.ivs.events/