BlockchainにおけるUXをテーマに、現状のUX課題と今後のアプローチについてディスカッションを行ったイベントに関するレポートになります。
■登壇者(敬称略・順不同)
・真木大樹 (BlockBase株式会社)
・石川駿 (double jump tokyo株式会社)
・中村昂平 (トークンポケット株式会社)
・青木宏文 (株式会社メタップス)
UI、UXは同じ文脈で語られるが、必ずしも同じではない。
UXがUIと重なる事例として、フェイスブックライブの例を挙げて説明する。
ライブ画面の下に視聴者のコメントが流れているため、UIデザインで視聴者と一緒にライブを見ているユーザー体験を提供しているものになり、UIのデザインによってUXを実現している事例といえる。
一方で、例えばアマゾンお急ぎ便など、欲しいものがすぐに手に入るサービスはどちらかというと、UIというより他の部分のウエイトが大きい。
アマゾンで商品を購入する場合、アマゾンのWebページ上で商品を購入すると、裏側のサーバーサイドアプリケーションで、注文処理→配送依頼→出荷→配送、といった処理が行われる。
この場合、物流の速さがUXを実現している。どちらかというとUIというより、その他の部分がUXに大きく関わっている事例である。
このようなかたちで、UXは必ずしもUIだけで実現するものではない。
UXは時間の経過とともに、醸成されるものである。
よくUXの中で言われているものは、
・予期的UX (アプリケーション利用前のUX)
・一時的UX (アプリケーションとサービスを利用しているときのUX)
・エピソード的UX (商品・サービスの利用後に得られるUX)
・累積的UX (体験を重ねることにより、得られるUX)
上記の4段階でUXを捉えることが提唱されている。
ブロックチェーンゲームのキャラクターなどを売買する、マーケットプレイスをユーザーが利用する例を挙げると、初めてマーケットプレイスを利用するユーザーはキャラクターが簡単に売れると良いという期待感を持って利用する。
実際にサービス上で出品して売買が成立すると、利用後の体験としては、売れて良かった、UIが良ければ、出品が簡単で良かったという感想をもつ。
売買が可能であり、使いやすいなどのイメージが蓄積され、もう一度利用するときは期待感が高まった状態となる。
出品をしてすぐに売れた、高額で売れたなどの体験を重ねると、更に期待感が高まる
複数回利用することで信頼やロイヤリティも生まれ、リピートユーザーとなり、UXが形成されていく。
パネラー
・真木大樹(BlockBase株式会社)
・石川駿(double jump tokyo株式会社)
・中村昂平(トークンポケット株式会社)
モデレーター
・青木宏文(株式会社メタップス)
パネルディスカッションでは、各パネラーが自社で取り組んでいる事業・サービスなどを紹介した後、参加者から事前に頂いている質問を元に、回答する方式で進行。
2018年9月にBlockBaseという会社を設立し、ブロックチェーン関連のコンサル、プラットフォーム開発等を行っている。
直近ではNFTのマーケットプレイスを構築中であり、近々リリース予定である。
様々な事業者とブロックチェーンに関する実証実験を行っており、その中で得た課題感やブロックチェーンのUXのあるべき姿を話したい。
(真木大樹(BlockBase株式会社))
double jump tokyoではマイクリプトヒーローズというブロックチェーンゲームを作り、運営している。
マイクリプトヒーローズのユーザー数は全体で25,000ユーザー程度であり、自身はスマートコントラクトの開発、フロントエンジニアリングを行っている。
ブロックチェーンに関わる画面設計なども行っているので、そのノウハウ等を共有できればと考えている。
(石川駿(double jump tokyo株式会社))
トークンポケットという会社でイーサリアムアプリを開発・提供しており、最近ではマイクリプトヒーローズのアプリをリリースした。自身はリクルートという会社に所属しており、トークンポケットは副業というかたちで携わっている。
(中村昂平(トークンポケット株式会社))
サービスのセキュリティを高めることが求められているが、セキュリティを高めるほど、UXは悪くなりがちである。
ブロックチェーンで使われているキャラクターやアイテムなどをユーザー間で売買できるマーケットプレイスを作っており、オフチェーンでもトランザクションを動かせるようにしている。
UXを高める為、サクサクと動かせるようにしたい。
メインチェーンで実装した場合、サクサク感を実現するために、通常のWebアプリと同様の管理が必要となってくることが課題と感じる。
ブロックチェーンを使ったプロダクトは分散管理されているので、ユーザーが悪意のある行動をした場合(法的問題のあるコンテンツの投稿など)、責任を取りにくい
(真木大樹(BlockBase株式会社))
マイクリプトヒーローズではアートエディットという、自分の好きな画像をキャラクターにつけることが出来るが、悪意のあるものを投稿する人(わいせつな画像や著作権侵害する画像など)がいる。
ゲームの運営側が削除・管理するということは、ブロックチェーンの非中央集権的な概念とは異なってしまうので、運営側が強くなり過ぎないようにという考えがある。
スケーラビリティの問題があり、サイドチェーンを使っても解決できなかったのでオフチェーン化した。必要な部分をメインチェーン、バトルをオフチェーンにすることでユーザーにとってはイーサリアムのスケーラビリティを意識せずにゲームが出来る環境を作ることができた。
(石川駿(double jump tokyo株式会社))
マイクリプトヒーローズは先進的な事例と考える。
専用アプリは画期的であり、ブロックチェーンゲームはiOSアプリを出すことはストア申請が通らない問題で懸念していたが、アプリケーションをウォレットのブラウザで表示させることでストア申請を通したことは革命的であると思う。
(青木宏文(株式会社メタップス))
ウォレットのプロバイダーとしての課題として、マイクリプトヒーローズのアプリを手掛ける前は、誰もウォレットにお金を入れておらず、仮想通貨の価格を参照する目的で使用されていたため、入金率が低かった。
マイクリプトヒーローズのアプリを手掛けた後は、アプリケーションを使う人数が増えたが、イーサリアムを持っていないユーザーが多かったので、イーサリアムを配布した。
ウォレット単体であると使われなかったが、ユーザー体験として、ゲーム等の面白いコンテンツがあると、ウォレットを使用するユーザーが増え、トランザクションが劇的に増えた。
(中村昂平(トークンポケット株式会社))
ブロックチェーンによって、デジタルアセットが資産性を持つようになる。
ユーザーとしては、浪費として従来のスマホゲームなどに課金していたものが、投資になる。
ユーザーが遊んだ時間が価値になるので、マイクリプトヒーローズをきかっけに、他のゲーム会社がブロックチェーン領域に出てきてほしいと考える。
日本から、“ゲーム×ブロックチェーン”が世界に広がっていくであろうと考えている。
(石川駿(double jump tokyo株式会社))
金融の分野でも、ブロックチェーンを使用することで今までの金融を変えると思っている。分散金融であるDeFi(Decentralized Finance)が大きなトレンドとなる可能性がある。
パブリックの状態になっているイーサリアムアドレスに対して、信用が蓄積されていけば、融資が受けられるかもしれない。
キャッシュフロー等もパブリックで見ることが出来るので、今まで金融サービスを使えなかった人たちが金融サービスを使えるという動きが出てくる可能性がある。
(中村昂平(トークンポケット株式会社))