8月28日と29日に東京で開催されたアジア最大のWeb3技術会議「WebX2024」。レポートでブロックチェーンゲームの話題を中心に紹介。
アジア最大規模のWeb3技術専門の国際会議「WebX2024」が、8月28日と29日の2日間、東京・芝公園のザ・プリンス パークタワー東京で開催された。世界各国から集まった業界の専門家や企業が、最先端の技術革新とその実用化について活発な議論を展開した。
ブロックチェーンゲーム体験が今後どのように進化していくのか、業界全体が大きな期待を寄せている様子が印象的だった。本レポートでは、WebX2024で議論されたブロックチェーンゲームの可能性と展望に焦点を当ててレポートする。
WebX2024:https://webx-asia.com/ja/
ゲームエリアではゲームセンターの筐体をイメージしたプレイ台が設置され、サイバー感ある会場となっていた。そこで見かけたブロックチェーンゲームをいくつか紹介。
入り口付近で派手な画面で目を引いていたのは、600万ダウンロードの人気シリーズをWeb3で再構築した「Blade of God」だ。
2017年東京ゲームショウでベストインディーゲームにノミネートされた「Blade of God」をベースに、Web3の特徴を活かした新たなゲーム体験を提供する。
PC、iOS、Android対応のクロスプラットフォーム展開により、どこでも楽しめるのが特徴。毎月20万人の新規プレイヤーが参加する活気あるコミュニティも形成されているという。
近日中にテストプレイを予定している。
MapleStory Universeは、Nexonが開発するWeb3対応のMMORPG。元の「メイプルストーリー」の世界観を継承しつつ、ブロックチェーン技術を導入し、プレイヤーがNFTとしてアイテムを所有し、取引できるエコシステムを構築している。ゲームにはPC版の「MapleStory N」、モバイル版の「MapleStory N Mobile」、ユーザー生成コンテンツの「MapleStory N Worlds」などが含まれ、異なるプラットフォームでのプレイが可能。特にNXPCトークンの導入により、プレイヤーはアイテムの創造や取引に参加でき、供給が制限されることでアイテムの価値が保たれるようになっている。
※残念ながら現在日本からのアクセスは制限されている
L3E7は原神風のビジュアルでPokemon GOのWeb3版というコンセプトを持つアクションARPG。プレイヤーは、現実世界の建物や土地が再現されたメタバース空間で冒険を繰り広げ、侵略者との戦いに身を投じることになる。
ゲームモードは屋外と屋内の2種類が用意されている。屋外モードでは、携帯電話のGPS機能を利用し、プレイヤーの実際の移動に合わせてゲーム内のアバターがリアルタイムで動く。一方、屋内モードではシミュレーターを使用し、外出せずにゲームに参加することが可能だ。
Capverseは、宇宙文明を舞台にした独特のデジタルペットゲームだ。このモバイルゲームでは、プレイヤーは「Sumers」と呼ばれる3体のキャラクターでチームを編成し、育成と戦略的なオートバトルを楽しむことができる。
ゲームの魅力は、ペット育成と戦闘の要素を巧みに組み合わせた点にある。PvEやPvPモードでのランキング報酬に加え、ミッションクリアやレアNFTの売買によって収益を得られるのも特徴だ。さらに、独自トークン「$CAP」(総供給量2億枚)の導入により、ゲーム内経済にも深みを持たせている。
現在、SumersのNFTと$CAPトークンは既に発行されており、ゲームはBNBチェーン上で展開中だ。日本への展開も今後予定しているとのことだ。
KOKODIは、日本のアニメ文化にインスパイアされた魔法のファンタジー世界を舞台とする、クロスチェーン対応のマルチプラットフォームMMOゲーム。三人称視点のエクストラクションシューターとして、PvPとPvEの両方のモードを提供し、戦略的な戦闘と没入型のストーリーテリングを融合している。
ゲームの特徴として、複数のブロックチェーンでの動作、多様な種族とキャラクター、NFT統合、そしてプレイ・トゥ・アーンメカニクスが挙げられ、BEAMブロックチェーン上で展開され、KOKOトークンを使用したゲーム内経済システムを採用している。
ブロックチェーンの知識がなくても楽しめるよう設計されており、アカウント登録時に自動でウォレットが作成されるなど、アクセスしやすさも特徴の一つです。現在はクローズドベータ段階にあり、今後の展開が期待されるタイトルだ。
開発チームは2024年中のローンチを予定しており、現在はウィッシュリストへの登録を受け付けている。
https://store.epicgames.com/ja/p/kokodi-fee89a
WebX2024で開催された注目のパネルディスカッション「ゲーム産業の未来:新興技術活用の可能性と課題」が、業界の最前線で活躍する5名を迎え、熱い議論を展開した。
どういった期待とか狙いとかを持ってこのビジネスに取り組み始めたのかとの質問に対して、「クリプトキティーズの登場は衝撃的でした」と語る金友氏。ブロックチェーン技術がゲームアセットの取引に革命をもたらしたという。一方、満足氏は「既存の事例を見ると、まだ一工夫必要」と指摘。真田氏はSTEPNの成功を挙げ、「稼げる」という新たなユーザー体験の可能性に言及した。
しかし、2024年夏の現状について、村田氏は「ユーザーのトランザクション数が期待ほど多くなかった」と冷静に分析した上で、大規模ゲーム開発はあきらめ、小規模なゲームの提供を通じて様子をみる選択をとったと語る。金友氏も「ヒット作不足でモメンタムが続かない」と課題を指摘した。
それでもWeb3ゲームの将来に期待を寄せる。真田氏は「STEPNは70万ユーザーで客単価10万円」と語り、「客単価とユーザー数の規模の関係をどうハンドリングするか、そこを見誤らずに、 しっかりその規模に応じた開発予算を 事業計画をしその中で目標設定することが大事だ」と主張。金友氏も「セカンダリー市場の規模が新たな指標になる」と予測した。
今後の戦略について、村田氏は「積極的な開発と既存事業の両立」を、金友氏は「価値あるコンテンツのオンチェーン化」を掲げた。満足氏はアジア市場での成長に期待を寄せ、真田氏はF2Pモデルを活用したユーザー基盤の拡大を提案した。
「Web3の普及は確実。問題は『いつ』か」。金友氏の発言にパネリスト全員が頷いたのが印象的なセッションだった。
ブロックチェーンゲームの発展に必要な要素と求められるトークノミクスのセッション、まず「今後のブロックチェーンゲームの発展に必要な部分」との質問に、KAZU氏は「今は、時間のない人が簡単に稼げるような単純なゲームが主流」と述べ、「これから本当に面白くてハマるようなゲームが登場するのではないか」と述べたことに対して、真田氏は、「ブロックチェーンゲームで従来のゲーム体験を目指すべきではないと」主張した。
従来のゲーム開発には莫大な予算が必要であり、ブロックチェーンゲームでは異なるアプローチが求められるという。「Web2.5」という概念を提唱し、Web2.0で遊べるゲームにWeb3.0の要素を徐々に加えていく戦略を説明した。
一方でKAZU氏は、Web2のユーザーとWeb3のユーザーで異なるアプローチを取る必要性を強調した。WOLFプロジェクトでは、エンターテイメント性の高いゲームをWeb2ユーザー向けに、短時間で収益を得られるゲームをクリプトマイナー向けに提供している。
石濵氏は、Web2からWeb3への移行を段階的に行う重要性を指摘。Yay!では、ユーザー体験を重視し、暗号資産の知識がなくても簡単に利用できるサービスを目指すことが重要だと述べた。
「理想のトークノミクスについて」の質問に対して、真田氏は持続的な価格上昇が理想的だと述べた。ゲームの人気が高まるほどトークンが暴落するジレンマを指摘し、広告収入を活用してトークンの需要と供給のバランスを保つ戦略を説明。
KAZU氏は、共有と所有の概念のバランスを取ることの重要性を強調した。長期的な視点で、コミュニティの幸福を目指すアプローチを提案した。
一方で、石濵氏は、「トークンの需要創出と流動性の確保が重要」だと主張した。特に、外部の投資家やトレーダーがもたらす流動性の重要性を指摘した。
最後に、真田氏はWeb3の今後について、リアルワールドとの連携が重要になると予測した。純粋なバーチャル体験よりも、リアルワールドの価値を流動化する基盤としてのWeb3の可能性を強調した。また、ゲーム業界全体の課題として、ユーザーの可処分時間の減少を挙げ、SNSやコミュニティ要素を取り入れたゲーム開発の重要性を指摘した。
ブロックチェーンゲームの発展には従来のゲーム開発とは異なるアプローチが必要であり、Web2とWeb3のバランス、適切なトークノミクス設計、リアルワールドとの連携が重要であることが示されたセッションとなった。