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Non Fungible Tokyo 2021レポート 1/2

Non Fungible Tokyo 2021レポート

ブロックチェーンゲームに関連するセッションを中心にレポート

「Non Fungible Tokyo 2021」が2021年6月10日、11日と2日間にわたり品川にあるTunel Tokyoで開催された。1日目は新型コロナウイルスの影響の為来場者は制限されていたが、同時にライブ配信も行われ、エントリー数が2500を超える過去最大のイベントとなった。

NFTはNBA Top Shotの盛況とBeepleのNFTが約75億円で落札されるニュースが話題となり世間への認知が拡大している。そういった状況の中でNFTビジネスにおける現状認識や、課題、未来について国内外のキーパーソンが集結し議論するイベントとなった。

このレポートではブロックチェーンゲームの話題と技術的なセッションで気になった話題を取り上げた。

Speaker: Hironao Kunimitsu (株式会社gumi)

オープニングトークでは「デジタルアセットに数量限定性を与えられる」「本物の証明」「所有者の証明」にあるとgumiの國光氏がNFTの特徴を説明。現状のNFTの課題としてはEthereumの「ガス代」が高い事であるが、L2の利用が進むことで近いうちに解決されるとの見方を示した。

また、「トラストレスx自律的x非中央集権的」「唯一性xトレーダブルx資産性」「トークンエコノミー」に注目していると述べ、今は高額のNFTがわかりやすいケースとして出ているが、最初からグローバルで、コントラクトを使ったNFTで近い将来に面白いものが登場するのではと、NFTの今後に期待を寄せた。

日本仮想通貨事業主から見たNFT

Speaker: Ryo Tanaka (LVC株式会社) / Kensuke Amo (コインチェックテクノロジーズ株式会社) / Misato Takahashi (Mercari, Inc.)/ Sokia Tamara (クリプトジャーナリスト/ モデレーター)

LVCの田中氏は「グローバルで取り扱えるBitMaxという取引所を持っているので、国内国外の取引が可能。日本の魅力的なコンテンツがあるので、LINEの中から簡単にNFTを友だちに送り合うことができるツールにしたい。まずは日本の魅力的なコンテンツを国内で普及させたい。」と暗号資産取引所を持つ強みを強調、「大手のIPをNFTコンテンツ化していき、世界に広げていきたい。ブロックチェーンを意識しなくても簡単に多くのマジョリティの人に使ってもらいたい。そういう世界にしたい。」とLINEのトークアプリとしてのUI/UXを生かしてNFTを普及させていく展望を語った。

Coincheckの天羽氏は他社に先行してNFTマーケットプレイスβを展開している、ブロックチェーンゲームを多く開発・運用しているアニモカブランズのThe SandBoxのNFTなどを販売しており「日本のコンテンツを輸出してプレゼンスを高めていきたい。海外のプロジェクトに日本展開のパートナーとして選んでもらい、国内に届けていきたい。」と述べた。

Layer2今後の予想

Speaker: Leona Hioki (ToyCash .Inc) / Aoi Serikawa (no plan inc.) / Ryo Manzoku (double jump.tokyo Inc.) / Taiju Sanagi (BlockBase)

Ethereumメインのブロックチェーンへ接続可能なレイヤー2(以下L2)というサードパーティー製のブロックチェーンの利用が拡大している。L2上でのトランザクション手数料はイーサリアムのガス代などに比べて大幅に安い事が特徴であるためだ。L2の利用が今後どうなっていくのかを技術者の視点から議論していく前半と後半にわかれた専門的なセッションとなった。

芹川氏は、「短期的には開発者フレンドリーでSolidityがそのまま使えるOptimisticが使われるようになると思う」と現在の状況を指摘した、ただOptimisticは7日間のロックアップがあることから、長期的にはzkRollupが使われていくと述べた。この意見には各登壇者も同意しているようで、真木氏は「ユーザーからはセキュリティレイヤーはあまり重視されていない」とユーザー側、開発者双方でNFTを扱いやすいチェーンが選ばれていくのではと意見を述べた。
さらに「今後はセキュリティレイヤーの技術はマーケティングとして使われていくのでは」と指摘した。機能特化型のL2と汎用型L2のどちらが使われていくかという話題では、特化型のL2として知られるLoopring(https://loopring.io)では利用者はいくらかのプールが必要な為わかりにくく、Polygonや利便性の高い汎用型L2が使われていくとの見解を述べた。

続く後半のセッションでは、L2が乱立している状況について議論が交わされた。
満足氏はブロックチェーンゲームの「マイクリプトヒーローズ」での事例を上げ、トークンがブリッジをまたいで別のチェーンに移動した先にどのNFTが本物かという問題点を指摘した。しかし、それによって現状困る状況にはまだ無いとの考えを述べた。

真木氏は「チェーンをまたいだNFTはまだユースケースとしてインターオペラビリティを必要とする要件まで成熟している状況にまだない。NFT発行者側にも利用者側にも多段にチェーン間を移動するようなニーズが無い」と現状のインターオペラビリティについての認識を示した。

どういった新しいビジネスが生まれるかという話題では、満足氏は「昔はL1だけしか無かった状況だったが、Polygon等のサイドチェーン等を使えば低い手数料でカード決済が利用できたりと、メタトランザクションの幅が広がった」と指摘。ゲームで使用するようなNFTは発行元のチェーンがどこであってもユーザーは気にする場面は少なく、ゲームで遊ぶ上ではL2上で低価格に発行され、取引など行う際にはメインチェーンに移動、という利用がスタンダードになっていく世界観を示した。

スポンサーセッション 3, 4(double jump tokyo)

Speaker: Speaker: Hironobu Ueno (double jump.tokyo Inc.)

double jump tokyoの上野氏によるセッションでは、同社が5月31日リリースしたMy Crypto Saga(マイクリプトサーガ、以下マイサガ)について説明した。
上野氏はマイサガを新たなブロックチェーンとしてのテンプレートになるべくリリースしたと述べ、ゲームの特徴を説明した。

・インゲームも新しくポーカーx NFTの新しいゲーム性。
・NFTを直販しないモデル。ゲーム内でプレイすることによりNFTを入手可能。
・エコシステムに新しいものを採用。NFT + Defiへの取り組み。NFTにMaticをデポジットした。

マイサガの狙いとして、NFTゲームの新たなテンプレートとなるべくビジネスモデルやエコシステムを構築したので、これからの発展を自らも楽しみにしていると述べた。

またdouble jump tokyoは2020年から多くの提携を行ったと説明した。特にスクエニとセガとの提携が実現できたのは長い議論の上に成りたっていると強調し、国内大手ゲーム会社はすでにNFTに注目しており、どういうだし方が良いかを考えている段階にあると考えを述べた。来年にはいくつかのゲームが出てくるのではと、有名タイトルのブロックチェーンゲームの登場の期待を感じさせた。

最後にマイクリのゲーム内で利用されているトークンである、マイクリプトヒーローズコイン(MCHC)について述べ、利用用途としてガバナンストークンとしての利用がなされており、マイクリのプロデューサーがMCHCを通じたユーザー投票を得て決まった事は、マイクリの本格的なDAO運営へ向けた大きな一歩であると評価した。

そして、MCHCの取引所への上場に向けて準備していく段階であり、その実現を加速させるためoasys社を設立したと発表した。oasys社はシンガポールの法人となり、MCHC上場の為の重要なキーとなる会社であり期待してほしいと述べた。

ゲームIPとNFTが変える未来とは

Speaker: Keisuke Hata (スクウェア・エニックス) / Mikio Fukai (Mobile Factory, Inc.) / Shumpei Kumagai (株式会社ネクソン) / Etusko Horie (セガ) / Yukinori Matsuya (double jump.tokyo Inc. / モデレーター)

近年ではNFTやブロックチェーン技術を既存のゲームシステムに取り入れていく動きが顕著になってきている。スクウェア・エニックスではdouble jump.tokyoと提携し「ミリオンアーサー」シリーズのひとつ「資産性ミリオンアーサー」の発表、ネクソンのビットコイン購入など、今年に入り発表が相次いでいる状況だ。スクウェア・エニックス、ネクソン、セガによるセッションでは、既存のゲームIPにNFTを活用する狙いや、今後のNFTを活用したゲームの未来について議論が交わされた。

セガの堀江氏は、既存のゲームIPを活用したビジネスとNFTを活用してのゲームIPビジネスを模索しており、double jump.tokyoとは1年以上前からコミュニケーションをとってきたと述べ、NFTはタッチポイントの創造と考えていると、NFTに対する認識を示した。

熊谷氏はネクソンは長くMMORPGを運営しており、MMOとNFTの相性は良いとの認識から、NFTは新しいビジネスを開く鍵との考えを示し、今後NFTの活用を検討していくとした。

企業がNFTを扱う上では経理上の取り扱いや、法律面での懸念点等がハードルになる場合がある。深井氏は上場企業の立場で先行してNFT事業を続けてきた事で得られたノウハウを業界でシェアしていくと述べた。

スクウェア・エニックスの畑氏は、同社が2018年頃からブロックチェーン技術に注目しており、新規ビジネスの推進としてNFTコンテンツの研究、開発を始めていると述べた。ソーシャルゲーム含め既存のプラットフォーム以外での新しい領域に興味をもっており、NFT、ブロックチェーンでどんなビジネスが展開できるかを企画していると語った。

NFTがゲームコンテンツをどう変えていくかとの質問に対しては、既存のゲームエコシステムを残しつつ、外側にNFTをおいて活用するやり方や、NFTのトレンドにのって売るだけではなく、ブロックチェーン技術のトレンドは移り変わりが早いため軸がぶれないようにしていくことが重要であるという意見が示された。

また、熊谷氏は「NFTはデジタルコンテンツを風化させない事が可能になる事や、ゲームをまたがることで価値の担保ができるかもしれない技術」と指摘し、長期運用ゲームにおいてのインフレを解決する手段として期待できると述べた。

セガの堀江氏は、NFTはグローバルなタッチポイントの一つで、既存IPを有効活用するためには有効な施策の一つになると期待を寄せた。

スポンサーセッション 6(株式会社クオン)

Speaker: Kazuhiro Mizuno (株式会社クオン)/ Kouhei Nakamura (Token Pocket)

クオンと共同でクリプトクリスタルをリリースした、トークンポケット代表の中村氏は、過去発行されたデジタルコンテンツがなにかの拍子に発見されて売れたという体験は面白と述べ、過去に発行されたNFTが200万円でうれた事を挙げた。また、最近は周辺ツールが進化してきたことから、過去発行されたNFTの新しい利用法が出てくるかもしれないとも述べた。

IPxDefiの思ってもなかった仕組みが今後現れると指摘。IP x DAO(中央集権的ではなく、参加者によって自律的に運営される組織)に注目。特にガバナンストークンを通じた運用によりIPの二次利用も含めガバナンスで決定していけると述べ、「IPクリエイターがある意味でCEOのような存在」になれば、「販売者/投資家」「消費者/利用者」「IPクリエイター」がそれぞれWIN-WINの関係になるのではと、NFT x IP x DAOの今後に期待を寄せた。

コンテンツを使ったdAppsサービスの展望

Speaker: Hironobu Ueno (double jump.tokyo Inc.) / Hideki Maeda (Financie) / Kota Ozawa (CryptoGames株式会社) / Takumi Takahashi (株式会社Kyuzan) / Junji Oshita (アクセルマーク株式会社 / モデレーター)

DAppsを早い時期からリリースしてきた各社は、当初はDAppsとしての理想型での運営を目指していたが、全てを非中央集権的な運営で行う事は厳しいとして考えているようだ。

ブロックチェーンゲームでは仕組み的にアイテムの発行であったりイベント企画など、どうしても中央集権的にならざるを得ない部分がある。上野氏は「本来DAppsを提供することを目指していた。しかし今は一部条件付きでDAppsを目指している」と述べ、マイクリプトヒーローズの初期にゲームロジックの全てをオンチェーン上で処理しようとして失敗した経験から、「技術としてのDAppsと文化としてのDApps」があるとの認識に至ったと説明した。

「技術的にDAppsでも文化的にDAppsでなければDAppsではないと考えている。文化的にDAppsであれば、技術の裏付けとして一部Appsを取り入れていれるのが正しい方向性としてのDAppsではないだろうか」DAppsのあり方を強調した。上野氏はマイクリを例に挙げ、ユーザーからガバナンストークンによる投票でプロデューサーが生まれた事例は、「文化としてのDApps」のあり方の一つであると強調した。

そうした文化的なDAppsは本当に成立するのか?という話題では、中央集権的な従来のゲームエコシステムからの脱却の必要性が指摘された。

高橋氏は「コンテンツ提供者側がNFTを消費者に販売するという関係性の中ではDAppsは生まれないと」強く指摘した。そして、運用の面で分散化することは難しいとしつつも、コンテンツを消費者が生み出しコンテンツ提供者側にもなれるUGC(User Generated Contentの略、ユーザー生成コンテンツ)の仕組みをパブリッシャーが提供できるかが重要だと述べた。

また新たにこの業界に参加する事業者へのアドバイスとして小澤氏は、「NFTに期待しすぎず、コンテンツを単にNFTにした事業は失敗すると思う」と注意を促した。これを受けて上野氏は「NFTというバズワードが生まれて、一般の人たちのリテラシーが高まり、手が届くものになったことが3年前とは大きな違い」と延べ、DAppsへの今後に期待をもって欲しいと語った。

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