ICOに代わり、セキュリティトークンやSTOを次なる投資先と見据える投資家が多い。
ここで、トークンの価値を算出する方法について考えたい。
仮想通貨市場において、2017年から2018年にかけてICOにより多額の資金を調達したプロジェクトが見られ、一時的なブームとなった。
しかし調達したプロジェクトチームのプロダクト推進力がなく、企画倒れに終わるケースや、中には詐欺まがいなケースも見られ、現在は以前のようにICOで資金調達することが難しくなった。
ICOにかわりセキュリティトークンやセキュリティトークンを利用して資金を調達するSTO(セキュリティトークンオファリング)が注目を集めており、次なる投資先と見据える投資家も多い。
前回の私の記事でユーティリティトークンの価値について考察したが、今回はセキュリティトークンの価値について考えたい。
セキュリティ(securities)とは一見、安全性や危険を守るものという意味が想像されるが、日本語にすると“証券”という意味となる。
トークンが取引可能な資産に裏付けられており、代表的なものでは「株式」や「不動産の所有権」などの金融資産をトークン化したものがセキュリティトークンとなる。
また、金融商品としてみなすか判断する指標として「ハウイ(Howye)テスト」というものがあり、以下の4つが要件となる。
・ユーザーがお金を投資している
・ユーザーがその投資からの収益を見込んでいる
・投資先が共同事業である
・収益の成長が第三者によって生み出されている
日本では金融庁で行われている“仮想通貨交換業者等に関する研究会”にて議論が行われているが、証券に近い性質のトークンは既存の金融規制と同様に扱われることが検討されている。
セキュリティトークンにはいくつかの種類があるが、ここでは「株式」の性質を持ったセキュリティトークンの適正価格について考えていきたい。
1株を1トークンとしたセキュリティトークンの場合、株価が適正であるかを算出する基準として、PER(株価収益率)が参考になると考える。
PER(倍)=株価÷1株当たりの利益
(1株当たりの利益とは、当期純利益を発行済み株式数で割ったもの)
PER(株価収益率)は上記の計算式で求められる。
PERでは企業が出す利益に対して、現在の株価が割高か割安かを判断することができ、低いほど会社の利益に対して株価が割安であり、高いほど株価は割高ということになる。
一般的には、PERの平均は15倍程度といわれているが、何倍以上が割高であるといった明確な基準はなく、業種・業界水準や他の銘柄と比較しながら判断する必要がある。
また急成長する株はPERでは見極めが難しく、特に創業間もない会社ではPERで価値を算定することが難しい。
PERの他に株価が適正であるかどうかを判断する基準として、PBR(株価純資産倍率)という指標がある。
PBR(株価純資産倍率)=株価÷1株あたりの株主資本
(1株あたりの株主資本とは、株主資本を発行済み株式で割ったもの。)
PBRは上記の式で算出され、1株あたりの純資産に対して何倍の株価で株が買われているかを示す指標である。
また基本的な目安としては1倍を目安として判断し、PBRが1倍以上なら割高であり、PBRが1倍以下なら割安であるということになる。
上記の図は市場別のPBRをまとめたものである。
東証一部、二部より成長が期待される企業が多いマザーズはPBRが約5倍となっている。
市場・業種によってPBRは大きく変わり、特に創業から年数が経過していない有望な企業ではPBRは大きくなる傾向がある。
株価の適正値を算出する方法としてPER、PBRを紹介したが、これらの手法では将来の企業価値を図ることは出来ない。
そこで将来生み出す価値を算出し、企業評価する一般的な手法として、DCF(Discounted Cash Flow)という方式がある。
DCFは将来のキャッシュフローを予測し、現在の企業価値に換算する方法としてM&Aなどでよく用いられている手法であり、将来の企業価値を勘案した現時点での株価を算定することが出来ると考える。
上記の図の株主価値を株式の総発行数で割ると1株あたりの株価を算出できる。
また企業の現在価値の算出方法としての式は以下になる。
公式だけでは少しわかりにくいので、例示を出して考えたい。
例えば、10億のキャッシュフローを生み出している会社のR(割引率・投資家が期待する利回り)が7%、キャッシュフロー成長率を2%と算定すると、この会社の企業価値は、
10億 / (0.07 – 0.02) = 200億 と計算される。
セキュリティトークンは取引可能な資産に価値が裏付けられている為、価格算定がしやすく、株式に性質の近いものは上述のPERやPBR、DCFを利用することで参考価格を算出可能であり、ユーティリティトークンより価格の推測が容易であると考える。
まだセキュリティトークンの定義や規制は明確に定まっていないが、証券に準ずる性質のものは既存の金融商品取引法の範囲で規制することが米国、日本で検討されている。
最近のトピックとしてNASDAQと提携した取引所、DX.Exchangeがサービスを開始した。
同取引所では暗号通貨のほかに、トークン化された株式の売買が可能となっていることが特徴である。
株式トークンはその株式を保有するのではなく、株式に紐づけられたERC-20トークンを購入することとなっている。株式とトークンは1:1の割合で価値の裏付けがされているため、株式を直接保有していることにはならないものの、株式を保有しているのと同じように配当を受けることが可能となっている。
また既存の株式取引とは異なり、24時間365日いつでも取引を行うことが可能であり、高い流動性を確保することが可能とされている。
今後、他の取引所でも同様に既存の証券とトークン化し、取引を提供する動きが広まってくると考える。
記事のポイント NASDAQ提携取引所、ついに始動 7種の暗号通貨を取り扱い 株式トークンの売買も可能NASDAQと提携した取引所としてサービス開始以前から注目を集めていたCoins.Exchangeは...