仮想通貨・ICO事業などに関わる事業者として、2018年4月より仮想通貨交換業等に関する研究会の動向を確認していました。
2018年12月、研究会の検討事項が纏められた報告書が公開されましたので、内容を纏めさせて頂きました。
2018年4月より、計11回にわたり金融庁が主催する「仮想通貨交換業等に関わる研究会」(以下、研究会と記述)にて仮想通貨交換業者に関する議論が行われ、2018年12月末にこれまでの検討を踏まえた報告書が公表されました。
私は仮想通貨・ICO事業等に関わる事業者としての立場として検討会の状況を追っていたこと、また公募の傍聴会に数回参加していたことより、研究会に関する報告書の概要を纏め、レポートとして報告したいと思います。
2018年4月上旬の第一回目の議論では、コインチェック社が不正アクセスにより巨額の資産が外部に流出した事件を受け、金融庁が登録業者・みなし業者に立ち入り検査を行った結果、内部管理体制の不備が多数指摘されたことが主な論点となりました。
そして議論の結果、規制当局から仮想通貨交換業者に顧客財産の管理強化、様々なリスクへの対応、業務体制整備など、様々な観点より指針が制定されました。
またICOについては、既存の資金調達より比較的容易に、多額の資金を調達しやすい市場動向を受け、詐欺的な案件や利用者保護が不十分な案件が多く、研究会でICOの実例紹介などが行われ様々な観点より議論されました。日本として規制面などでどのように対応していくかという点について、報告書で纏められています。
本レポートでは、仮想通貨交換業者への顧客財産の管理保全の強化や、適切な業務遂行確保などの課題に関する内容と、ICOに関わる規制の内容にフォーカスして纏めたいと思います。
仮想通貨交換業者において、犯罪収益移転防止法における本人確認義務の導入、マネーロンダリング・テロ資金供与対策、資金決済法における利用者整備が図られ、2017年4月に施行されました。
しかし不正アクセスによる仮想通貨が流出した事案や、内部管理体制が不十分である実態が明らかになったことより、研究会にて制度的枠組みの改善による対応が考えられる課題について検討が行われました。
仮想通貨交換業者にはセキュリティの観点から可能な限り、受託仮想通貨の移転に必要な秘密鍵をコールドウォレット(オフライン)で管理することが求められています。
またセキュリティ対策に加えて、流出事案が生じた場合の対応が予め明確であることや、顧客に対する弁済原資が確保されていることも利用者保護の観点から重要と考えられています。
一般的に業務上、顧客の資産を預かる業者には、顧客財産の流用の防止や破綻時における顧客財産の明確化の観点より、自己財産と顧客財産の分別管理が求められます。
仮想通貨交換業者が管理する顧客の金銭については、資金決済法上、自己資金とは別の貯蓄金口座、または金銭信託で管理することが求められています。
ICOに係わる規制について、一部の国では禁止する動きも見られます。
しかし、日本においては将来の可能性を含めた一定の評価もあることを勘案し、現段階で禁止すべきと判断せず規制内容を明確化し、既存の規制の中で対応するかたちで利用者保護や適切な取引の確保を図っていくことが検討されています。
また、ICOで発行されるトークンが将来的に物やサービスと交換できるもの(ユーティリティトークン)は既存の決済規制で、証券に近い性質のトークン(セキュリティトークン)は既存の金融規制の範囲で扱われることが検討されています。
投資家が適切な投資判断を行うためには、事業の実現可能性が客観的に確認されることが重要であり、例えばIPOでは主幹事証券会社がIPOに伴う審査義務を負います。
ICOについても、詐欺防止や使途・内容が不明確なトークンの発行、流通防止の観点より第三者が発行者の事業、財務状況を審査する枠組みを構築することが考えられています。
研究会では、仮想通貨を取り巻く環境が変化を続ける中で生じた様々な問題について議論が行われ、報告書によって制度的な対応の方向性が示されました。
日本においては、今後のイノベーションの可能性が期待されている中、適切な範囲で規制が行われるという方向性に纏まりました。
仮想通貨・ブロックチェーンには国境がなく、インターネット上で全世界に通じている為、各国の協力が必要となり、近い未来にはグローバル基準の規制やルールが敷かれるものと考えます。